性労働者のコミュニティから「物語」を盗むな 米女優に批判殺到

2020年11月22日、カリフォルニア州ロサンゼルスのマイクロソフト・シアターで、2020年アメリカン・ミュージック・アウォードに出席したラヴァーン・コックス(Photo by Emma McIntyre /AMA2020/Getty Images)

女性の性的搾取をテーマにした戯曲家サラ・ジョーンズの1人芝居『Sell/Buy/Date』が映画化されることが発表された。

プロデューサーに名を連ねるのはメリル・ストリープやラシダ・ジョーンズ、ラヴァーン・コックスといった大物俳優。しかしソーシャルメディア上では、「ジョーンズが自分たちの物語を食い物にした」「ジョーンズとストリープはかつてセックスワーカー反対運動を支持していた」とセックスワーカーたちの怒りが爆発。これを受けてコックスが急遽降板し、「私はもう『Sell/Buy/Date』には一切関わっていません」とTwitterに投稿した。

2016年に上演された『Sell/Buy/Date』は、ジョーンズが3年間にわたってセックスワーカーや顧客に取材した内容をもとに登場人物を練り上げたと言われている。たとえば、子供の学費を払うためにしぶしぶセックスワークをしている西インドの女性。大学でセックスワークを専攻しつつ、ポールダンスをたしなむ白人の女子大生。全体的にこの芝居は、セックスワークが女性の地位向上の手段になりうるという考えに懐疑的だ。「解放された気がするとは言わないわ。でも稼いでいるという気はするわね」とは、ある登場人物の台詞だ。

2016年、ジョーンズはヴォーグ誌とのインタビューで、「かたや“セックスワーク”、かたや“売春”と呼ばれるものについての話題」が『Sell/Buy/Date』のきっかけになったと語っている。「両者の線引きはどこにあるのか? その理由は? 私たち女性、そして女性を愛する男性は、こうした女性の地位向上やフェミニズムについてどう考えているのか? セックスについて語るとはどんな感じなのか?」と本人。

『Sell/Buy/Date』が初上演されると、ニューヨーク・タイムズ紙をはじめとする各媒体は、女性搾取にまつわる諸問題を掘り下げたトランプ時代にふさわしい作品として絶賛した。だが、ロサンゼルスを拠点に活動する批評家ケイト・ヤング氏など一部のコメンテーターは「セックスワークを人身売買や未成年者に対する性搾取と混同するという重大な間違いを犯している――こうした扇動的な話題は、極端に走ってごくありふれた話題をセンセーショナルに騒ぎたて、議論を無意味にしてしまう」と考え、ジョーンズの戯曲は「セックスワーカーを安売りしている」と主張した。

Translated by Akiko Kato

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