マシン・ガン・ケリーが語る時代精神「ロックンロールにはロックスターが必要なんだ」

マシン・ガン・ケリー(Photo by Alexandre Faraci)


「託す」ことで広がった可能性、収穫と喪失の一年を振り返る

―最新作の『Ticket To My Downfall』ではポップパンクに回帰。あなたのルーツでもある音楽と今このタイミングで改めて向き合い、それが多くの人に受け入れられた。そして全米1位になった。このことについてはどう感じていますか?

MGK:言葉にできないくらい感謝している。1位になれた理由は、元々いたファンが聴いてくれただけでなく、これまで俺の音楽を知らなかった人たちが、俺の音楽を聴いてみようと思ってくれたから。そして、みんながこのレコードの誠実さを理解してくれたからだと思うんだ。それを感じ取ってくれた人たちが、人から人へと広めてくれたから1位になれた。人の言葉がもつ力ってすごいなと実感したよ。例えば聖書はみんなにシェアされているストーリーで、人が人に伝えるということが繰り返され、誰もが知る作品になった。ある一つの場所で起こったことが、人から人へと世界を旅して広がっていったわけだよな。口伝というものがどんなに効果的なものなのかを実感できたのは、本当にありがたい。それも、デジタルが全てを支配する今の時代にね。今回の俺のアルバムは、でっかいデジタルのキャンペーンをやったわけじゃなかった。どちらかというと、リスナーに託したんだ。

―『Tickets To My Downfall』には今日的なラップミュージックの要素も入っていますよね。トラップのビートも聞こえてくるし、トリッピー・レッドなどラップアクトも複数参加しています。

MGK:俺はそのバランスが好きなんだ。トリッピーのことはもう長く知っているけど、彼とは同じ部屋で作業した。トリッピーは彼が何をしているのか、この目でずっと見ていたいと思わせるくらい素晴らしい。自分が住んでいる世界の中に、そういった新しい世界、素晴らしい世界を取り入れるのは大切なことだと思う。彼らのような存在から刺激を受けるからこそ、俺自身も興味深いアーティストであり続けることができるんだ。

プロデューサーについても同様だね。今回はトラヴィス・バーカー(blink-182のドラマー)が可能性を広げてくれた。俺がこれまで挑戦したことのなかったキーを試すように背中を押してくれたんだ。俺たちは何百万人もの人々が気に入ってくれている、すでに定着したカタログを持っている。そこにファレル(・ウィリアムス)やジェイ・Zのようなアーティストやプロデューサーが入ることで、新しくて面白いものが生まれるんだ。俺の場合は、ポップパンクの神であるトラヴィスがそれを助けてくれた。彼のガイドのおかげで特別な作品を作ることができたと思う。自分以外の信頼できる人間に託すということも、いい作品を作るうえでは重要なんじゃないかな。そういう意味では、俺もいつか誰かのアルバムをプロデュースしてみたいと思うしね。



―2020年はトラヴィス・スコットが『フォートナイト』で行ったバーチャルライブのように、オンラインやバーチャルの可能性が大きく注目された年でもありました。あなた自身はそのあたりに興味はありますか?

MGK:いや、やってみたんだけど俺はエンジョイできなかった。やっぱり、みんな同じ空間にいて一緒に逃避やハピネスが経験できないと、カタルシスを感じられないんだよね。

―バーチャル以外のやり方で、自分の音楽をこれまでとは違うようなやり方でプレゼンテーションするようなアイデアも考えていたりしますか? 

MGK:むしろ、何もすべきじゃないと思う。ニューノーマルを無理に作り出そうとしなくてもいいと思うんだ。オーディエンスやコンサートがなくなってしまった事実は変わらない。直接音を聴くのと、スクリーン上や何かを通して音を聴くのとはやっぱり違うよ。ライブでは、リアルさを感じるんだ。同じ空間にいると衝撃を受ける。「今」という時間を感じるだろう?


2021年1月に公開された、『Tickets To My Downfall』を元にしたミュージカル映画『Downfalls High』。MGKとトラヴィス・バーカーがナレーションを担当している。

―2020年はパンデミックの影響がとにかく大きかったわけですが、あなたから見てこの一年の音楽シーンはどんなものだったでしょう?

MGK:すごくいい音楽がたくさん生まれたと思う。今年はいろいろあったからこそ、多くの人たちが語るべきこと、語りたいことがあった。心から感じる怒りや、吐き出したいものがあったと思うし、それこそが優れたアートを作り出すんだ。戦争が起きていたときも、多くの素晴らしい絵画が生まれたりしたわけだしね。張り詰めた緊張感や、その中で伝えたいことがアートに深みを出す。だから、俺は今年はアートにとっては逆にいい年だったと思ってる。でも怖いのはやはり、ライブというアートがなくなってしまったこと。あれはその空間で作られるものを直接感じることが出来るからこそ成り立つアートで、その代わりになるものを探し出すのは難しいだろうね。

今年じゃなかったらやらなかっただろうけど、(3月末に)俺とトラヴィスとバンドで、パラモア「Misery Business」のカバーを演奏してビデオをリリースしたんだ。全員がそれぞれの部屋で演奏して、その映像をくっつけて、みんなでジャムしてるビデオ。それから同じような形態のビデオがどんどん出てきたけど、あの形式でジャムをやってビデオをアップしたのは、俺たちが初めてだったと思う。ジミー・ファロン(アメリカの人気TV番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」)とかが同じ形を使うようになって、それが皮肉にもニューノーマルになった。それに、ポップパンクというメインストリームには存在しなかったジャンル、10年くらい眠っていたジャンルのアルバムを今リリースしたことで、2020年という奇妙な年にさらなるひねりを加えられたとも思う。人々をちょっと驚かすというか。例えばカニエが『808s & Heartbreak』(2008年)をリリースしたときみたいに。彼があのアルバムをリリースしたとき、みんな「なんでカニエが歌ってるんだ!?」と言ってたのを覚えてる。そんなサプライズを経て、あのアルバムはカニエのなかで最も愛されている作品の一つになった。そういった衝撃と驚きが、より多くの人々にその作品を聴いてみたいと思わせるんだ。



―2021年は音楽にとってどんな年になると思いますか? あるいは、どんな年になってほしいですか?

MGK:希望に満ちた年になってほしい。今年はみんなが多くのものを失ったと思う。それを取り戻せる年になるといいな。

―2021年にやってみたいことは?

MGK:映画を監督すること、新しいアルバムを作ること、あとはステージに戻れたら最高だね。

Text by Toshiya Oguma, Translated by Miho Haraguchi

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