田中宗一郎×小林祥晴「米ローリングストーン誌の年間ベストから読む2020年の音楽シーン」

2021年はケンドリック・ラマーとラナ・デル・レイの年?

田中 じゃあ、2021年の展望。今年アルバムを出さなかったケンドリック・ラマー、ドレイク、ラナ・デル・レイ辺り。ラナ・デル・レイの場合、本当か嘘か、ヴァイナルの生産が間に合わないからリリースを年明けに延期するっていう(笑)。その代わりに1930 年代半ばにジョージ・ガーシュウィンが書いた「Summertime」のカバーを出したり。

Lana Del Rey - Summertime The Gershwin Version


小林 今年出なかったアルバムの代わりにカバーアルバムを出すと言ってますけど、そこに何かしらの布石があるのかどうか。彼女は昔からノスタルジックなサウンド志向ではありましたけど、前作からは本当に次は何をやるかまったく読めない感じになった。

田中 2020年の年明けにはロック的なサウンドを取り込んでいると噂されていたケンドリック・ラマーのアルバムはやっぱり作り替えてるのかな?

小林 今年9月にPVを撮っているっていう噂が出たりとか、アルバム6枚分の曲があるっていうリークがあったりとか、情報は錯綜しているんですけど。でも、ケンドリックってBLMのタイミングで一切メッセージを発していないですよね?

田中 そう。2014年からのBLMの高まりで抗議行動のアンセムになった「Alright」を出したケンドリックが沈黙を守っているっていう。

小林 もし今年アルバムを出していたら、良くも悪くもBLMのアルバムにならざるを得なかったわけじゃないですか。そこを敢えてずらしたっていうのは、やっぱりアルバムの内容と関係しているのかもしれない。

田中 そんなわけで、こんな風にいろんな注目が集まった作品がたくさんありながら、俺の今年のフェイヴァリットのひとつ、セレーナ・ゴメスの『Rare』が見事に見過ごされた年だった。それは最後に言っておかないと。

小林 The GuardianとローリングストーンとBillboardとタナソウさんだけが評価しているっていうね(笑)。まあ、それだけ評価されていれば十分とも言えるけど。

田中 見過ごされ続ける人、セレーナ・ゴメスが、ある意味、その本領をさらに発揮した年だったというね。いや、『Rare』、マジで最高だから!

Selena Gomez - Rare


Edited by The Sign Magazine

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