ジョン・ブライオン『Meaningless』20周年 名プロデューサーの「隠れた名作」を振り返る

ジョン・ブライオン(Photo by Robert Gauthier/Los Angeles Times/Getty Images)

プロデューサーとしてフィオナ・アップルやカニエ・ウェスト、マック・ミラーなどを手掛け、映画音楽の世界でも長年活躍し続けてきたジョン・ブライオンだが、2001年にセルフリリースした唯一のソロ名義のスタジオアルバム『Meaningless』は、当初メジャーレーベルからお蔵入りにされたという。この傑作はいかにして置き去りにされてしまったのか。ブライオン自身と彼のコラボレーターたちの証言で振り返る。

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とある2000年代初頭の傑作が存在するが、ネット上ではほとんど見つからない。20年前の1月にリリースされた『Meaningless』は、音楽プロデューサーのジョン・ブライオンがソロ名義で出した唯一のアルバムだが、CD Baby等のネットショップからCDを購入するか、リッピングされた低音質のバージョンをYouTubeで探すしかない。『Meaningless』には、不安や報われぬ愛や絶望感を歌った数々の名曲が収録されている。しかし熱烈なファンでもない限り、宝石のように輝く作品を耳にする機会はこれまで全くなかったに違いない。

「彼のメロディのセンスは秀逸で、ミュージシャンとしても素晴らしい人だ」とエイミー・マンは、ローリングストーン誌に証言した。彼女は『Meaningless』の中でブライオンと1曲共作している。「彼自身がもっと曲を書いてレコードを出せばいいのに、といつも思っていた。彼はシンガーソングライターとしても素晴らしいから」



この25年間、ブライオンはプロデューサー、ゲストミュージシャン、コンポーザーとしての地位を確立してきた。彼はフィオナ・アップル(『Extraordinary Machine』)、カニエ・ウェスト(『Late Registration』)、マック・ミラー(『Circles』)らアーティストの他、映画『エターナル・サンシャイン』(2004年)や『レディ・バード』(2017年)等の音楽も手がけている。しかし90年代、ダニエル・ジョンストンやロイヤル・トラックスといった型破りなアーティストがメジャーレーベルとの契約を勝ち取る中、ブライオンのソロアーティストとしての才能が、ラヴァ・レコードのA&R担当者の目に留まった。そうして制作されたアルバム『Meaningless』は、移り変わりの激しい当時の音楽業界の犠牲となってしまう。ビートルズとELOを足したような豊かな音楽スタイルに、ストレートでユニークなメロディを持つ作品だが、「ヒット性」に欠けるということで、レコード会社にお蔵入りにされてしまった。これをきっかけにブライオンは、ソロアーティストとしての活動にやる気を失ってしまったようだ。

「少しでもレーベルの側からアルバムに対する期待感が見えれば、こちらは上手くやったんだな、と判断できたと思う」とブライオンはローリングストーン誌に語った。「仮に上手くできていたのであれば、おそらくもっと違った展開があったろう」

Translated by Smokva Tokyo

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