外出自粛でギターを買う人が急増 コロナ特需で楽器の小売が好調


● 新規顧客の登場


楽器小売チェーンは、2020年にかけて新規顧客と音楽を初めて習う人の数が急増することに注目した。これはつまり、昨年のはじめと比べてビジネスの裾野が広がったことを意味する。

Guitar Centerのダダリオ氏は、ギターの売り上げが伸び続ける背景には、「エントリー価格——とりわけ抜群のコスパで人気を誇るGuitar Center Exclusive対象の初心者向けの楽器の人気がある」と続ける。それに加えて、女性や若い世代のギタープレイヤーが増えたことも指摘する。「楽器を弾いてみたいという40歳以上のギタープレイヤーも増えています」。さらにダダリオ氏は、次のように続ける。「さらにステイホーム期間中は、11〜15歳と40歳以上の年齢層のレッスン受講生が増え続けています」。

Reverbのマンデルブロ氏は、ポッドキャスト用であれ、DIY式の音楽制作であれ、レコーディング機材を買う人の増加というトレンドを指摘するものの、初心者の増加はそれを凌ぐと述べた。顧客との会話を通じてマンデルブロ氏は、1日中パソコン画面を見つめなければならないストレスや気晴らしとして新たに音楽に興味を持つ人が増えていることに気づいた。「パンデミックの到来によって仕事探しに困っているブルックリン在住のフリーランスの人から話を聞きました。その人は、空白の時間と心を埋めるため、Reverbでマンドリンを買ったそうです」とマンデルブロ氏は言う。こうしたベーシックな楽器は、次から次へと最新機器が生まれる現代から逃避させてくれるドラッグのようなものだと言い添えた。「4〜6月または7〜9月にかけてReverbで初めて音楽機材を買った人は、またReverbのサイトを訪れて別の機材を購入してくれます」と氏は語る。

春から初夏にかけての需要データを見直しながらFenderのヴァン・ドンク氏は、500ドル未満の商品の売り上げが92パーセント伸び、500〜1000ドルといった価格帯の高級ギターを購入する“経験者”が26パーセント増えたと述べる。「ソフトウェアとしては、Fender Play(訳注:レッスン動画等を配信している同社のアプリ)の3カ月無料キャンペーンを提供したことで100万人近くがギターを習いはじめました」と彼女は言う。

Gibsonも先日、独自のアプリを発表した。同アプリは、ARを使って一対一でギターの弾き方が習えるいくつものツールを提供している。同社の代表によると、同アプリは発表から1週間で予想数の2倍の登録者を記録したそうだ。

「多くの人は、『前からギターを弾いてみたかったんだ』と言います」とGibsonのカーレイ氏は語る。「すると、こうした人たちがある日突然ギターを弾きはじめたんです。その一方、経験者やプロレベルの人たちは『まいったな、欲しいギターがありすぎる。理想のギターを手に入れずに死んでしまうなんてあり得ない。よし、買っちゃえ!』といった具合でしょうか。こうした事態は7月、8月頃から同時に発生しました……私が思うに、過去10年と比べて昨年ほど多くのギタープレイヤーが誕生した年はないのではないでしょうか。このレベルを業界として維持できれば、私たちは今後10、20、30年にわたって新世代のギタープレイヤーを獲得することができるのです」。

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カーレイ氏は次のように続ける。「SGを弾いているグレタ・ヴァン・フリートのメンバーやギターを弾くアンガス・ヤングの姿をローリングストーン誌の表紙で見た子どもは、『ママ、僕にもギター買ってよ』と言うでしょう。300ドルあればEpiphoneのギターが買えます。1000ドル出せば、エントリーレベルのGibsonだって買える。それに5000ドル出せばカスタムメイドのギターだって手に入るんです。なかには20年ないし30年かけて理想のギターをようやく手に入れる人もいます。それは素晴らしいことです。こうした人たちは、30年ギターを弾くという冒険をしてきたのですから」。

From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori

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