THE BLUE HEARTSを読む、悲しみと孤独から始まった人の絆を歌ったバンド

未来は僕等の手の中 / THE BLUE HEARTS

1枚目のアルバムからこの曲も選ばれておりました。1987年5月に発売されたアルバム『THE BLUE HEARTS』の1曲目。こうやって始まったバンドなんですね。陣野さんは、THE BLUE HEARTSの歌を解く鍵として二つ言葉を挙げています。それは、悲しみと孤独。「未来は僕等の手の中」は、彼らにとっての孤独の確認だったのではないか? 彼らだけではなくて、リスナーとの確認ですね。アルバム『THE BLUE HEARTS』には「パンク・ロック」という曲もあって、この曲もそういう曲ではないかと書いています。例えば「友達ができた 話し合えるやつ 何から話そう ぼくのすきなもの」という歌詞があります。曲全体でパンク・ロックが好きだと繰り返しています。パンクロックというのは、世の中の不条理や体制の矛盾など社会的な怒りのようなものがバックボーンになった反抗の音楽という解釈があって。僕らもそう受け止めてきましたし、パンクロックを説明する時には大抵そういうステレオタイプの説明があります。でも、THE BLUE HEARTSはそうではない。ただパンクロックが好きだと歌っているだけなんだと。確かにそうですね。そして、パンクロックで友達ができた歌だと解釈している。そう考えると、THE BLUE HEARTSの歌には人と人のつながりを求める歌がたくさんあるなと、と改めて思ったりもしました。「キスしてほしい」、「人にやさしく」なんかも、人と人とつながりたいんだよ、ぼくは友達が欲しいんだよ、君とわかり合いたいんだということをストレートに歌った曲ですね。そういうバンドとして始まった。それを陣野さんは、悲しみと孤独という言葉で表現しておりました。

街 / THE BLUE HEARTS

続いて、同じく1枚目のアルバムから、同じような曲としてこの曲「街」を選んでいました。「未来は僕等の手の中」とこの「街」、共通している部分がありますね。彼らにとっての街は「アスファルトだけじゃない コンクリートだけじゃない いつか会えるよ きっと会えるよ、同じ涙をこらえきれぬ友達と」と言うように、友達と会える場所だった。今は会えていないけど、きっと会えると歌っている。今しか僕にしかできないことがあるんだ、という個人的な歌ですね。ここから色々なことが始まっていくという歌であります。これが面白いのですが、陣野さんは THE BLUE HEARTSの歌を、友愛の共同体という言葉で表現していました。つまり、愛や恋、性愛を抜きにしてできる共同体。「リンダリンダ」でも「愛じゃなくても 恋じゃなくても 君を離しはしない」という歌詞があるように、ラブソングという言葉で括りきれない人と人の絆を歌っているバンドなのではないかと言っています。よく聴き手との絆という言い方をしますけど、陣野さんはそんな風に呼んでいました。

Rolling Stone Japan 編集部

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