THE BLUE HEARTSを読む、悲しみと孤独から始まった人の絆を歌ったバンド

ロクデナシ / THE BLUE HEARTS

1987年11月に発売になった2枚目のアルバム『YOUNG AND PRETTY』から「ロクデナシ」です。さっきの「街」は作詞作曲はヒロトさんでしたが、この曲はマーシーさんが手掛けてますね。「劣等生で充分だ はみだし者で構わない」と歌っています。今回の本「ザ・ブルーハーツ: ドブネズミの伝説」は評論集ではあるんですけど、いつどこで何があったのか、彼らがどんな行動をしたのかということも客観的に踏まえられていて。メジャーデビューをした時に、彼らが出した条件も書かれていたのですが、絶対に歌詞は変えない、というのが彼らの条件だった。彼らが歌ってきたことは、CD化されても歌詞が変わったりすることはない。これはやはり、メジャーで歌っている人としてはあまり例のないデビューではないでしょうか。そういう歌詞に対して陣野さんは、「どこを切り出しても人を見下ろしたり馬鹿にする言葉が一切ない」と書いてます。これも改めて音楽を聴いている時に、ああ、そうだったなと思わせてくれる、一つの共通項になるんだろうと思います。

陣野さんは文芸批評家ですから、ドブネズミ一つとっても、色々な小説に出てくるドブネズミの比較が入り口になってます。昨年にコロナ禍が始まったこともあって、本の書き出しの中で触れているのがアルベール・カミュというフランスの作家の『ペスト』という小説。ペストは人間の歴史の中で有数の感染症ですね。ペスト感染の媒介になったのがネズミだった。この小説では、ネズミは人類の敵として描かれているんです。でもTHE BLUE HEARTSの中のネズミは、「リンダリンダ」に「ドブネズミのように美しくなりたい」と歌われているという、とてもリアリティがある始まり方でした。でも、「リンダリンダ」では決してドブネズミを美化しているのではない、ありのままでいることが美しい、ということなんだ、と彼は推理してます。

Rolling Stone Japan 編集部

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