WONK江﨑文武が語る、巨匠エンニオ・モリコーネの音楽愛と果敢な実験精神

ポール・アンカやペットショップ・ボーイズ……モリコーネとポピュラーミュージックの関わり

─フランソワーズ・アルディの「Je changerais d’avis」や、ポール・アンカ「Stasera resta con me」といった他アーティストへの楽曲提供、ペットショップ・ボーイズとの共作「It Couldn’t Happen Here」など、モリコーネとポピュラーミュージックの関わりについてはどう評価されますか?

江﨑:キャリアの初期はいわゆるポップス作家としての仕事をしていたとのことで、少なくとも「マスに向けたメロディを作る」というスキルは、このタイミングで鍛えられたのではないかなと推察しています。




─モリコーネの音楽は、「映画」に対してどんな意味を付加してきたのか、あるいはどんな相乗効果を生んできたのだと思いますか?

江﨑:昨今の映画は、音楽で強い情景や感情の表現を行わないものが多いですよね。でも、モリコーネとジュゼッペ・トルナトーレ監督が手がけてきた作品は、その逆を行っているように思います。「音楽で映画の色付けをしていく」という手法を確立、追求した2人なのではないかと。


新型コロナウイルスやNetflixの影響で、今後の映画音楽はどう変わる?

─新型コロナウイルスの影響やNetflixの影響もあり、映画館の存在意義そのものが問われています。それに伴って、映画音楽のあり方は、今後どのように変わっていくと江﨑さんは思いますか?

江﨑:モバイルデバイスでの視聴が増加していく中、一部のイヤホン、ヘッドホンでは、モバイル端末でもサラウンド環境で音を聴くことができるようになりました。音楽制作ソフトでも簡単にサラウンドミキシングができるようになりましたし、映画監督と音楽家がより密接に、サラウンドミキシング前提で作品作りをする流れは確実に主流になっていくと思います。

─改めてモリコーネ作品の魅力、江﨑さんの作品に与えた影響について教えてください。

江﨑:「神は細部に宿る」という言葉がぴったりな音楽家だと思います。自分の作品への影響という点では、彼の様々な音楽の中でも、心温まる、優しい音楽の側面がいちばん大きいかなと思います。

Edited by Aiko Iijima

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