古川本舗が語る、5年ぶりの活動再開と自主レーベル立ち上げの理由

ーそこからギアが入ったタイミングというのはどういう感じだったんでしょうか。

小学校くらいの頃からずっと仲のいい20年来の友だちが1人いまして。年に1回ぐらい会うか会わないかぐらいの関係なんですけど、2、3年前ぐらいに飲んだ時に「最近何やってんの?」という話になったんです。その子は僕の小学校時代も知っているし、中学校から高校、大学といろんなバンドをやってた頃も知ってるし、東京に出てきて社会人として仕事を始めた頃も、古川Pとしてボーカロイドを触っていた頃も知ってるし、古川本舗時代も当然知っている。全てをフラットに扱ってくれる人なんですよね。僕は地方の人間なので、本名時代の友人は自分のことを本名で呼ぶし、東京に来てからの友人は大体「古川さん」とか「本舗さん」って呼ぶし、その時々自分が名乗っていた名前とかあり方によって、人からの呼ばれ方や見られ方が変わってきたんです。自分もそのつもりでいたんですけれど、その友だちからすると「結局どれもこれもあんたでしょう」みたいな話になった。「なるほど、そういう考えはあまりなかったわ」と思ったんです。そこから、名義とか、自分がどう名乗るかに関係なく、自分自身や自分が作ってきたものをフラットに考えられるようになった。それで、もう一度古川本舗のお世話になろうと決めた感じでした。

ーなるほど。音楽活動をどうするかという以前に、自分のアイデンティティをめぐる混乱があった。

そうですね。全くその通りです。そこから「古川本舗として新しいものを作ればいいんだ」という、シンプルな方向に切り替わった感じでしたね。それまではなんだかよくわからないけど、とにかく新しいものを作ろうとして、わけがわからなくなっていた。何を基準として古いとか新しいを考えればいいのかわからないから、着地できなかったんです。だけど、古川本舗として新しいものを作ればいいというシンプルな話になると、過去に作ったものがあるので、そこが基準になる。そこに行き着いた感じでした。

Rolling Stone Japan 編集部

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