古川本舗が語る、5年ぶりの活動再開と自主レーベル立ち上げの理由


ー「知らない」以外にもいくつかのデモ段階の楽曲を聴かせていただいたんですが、全体的にローファイ・ヒップホップや、チルのテイストに通じるものを感じました。このあたりは参照軸になったり、何かしらの影響を受けたということはありますか?

それはあります。ローファイ・ヒップホップ系すごい好きなので。ただ、直近なものに影響を受けたというよりは、もともとNujabesがすごく好きだったんですよ。それこそ僕が東京に出てきた頃、バンドを辞めて全然音楽を作ってない時期に聴いていたんです。それがリファレンスになって、今の形に作り変えられて流行っているという風に見ていたので。自分としては「あ、その手があったか」みたいな感じでした。「こういうのやってもいいんだ」って。

ーただ、いわゆるローファイ・ヒップホップと言われているサウンドって、良くも悪くも匿名的で主張がないサウンドですよね。人の背後に隠れるタイプの音楽である。それに対して、古川本舗の曲には、ちゃんと詩情やエモーションがそこにしたためられていると思うんです。そこに関してはどうでしょうか。

まさしく今おっしゃられた通りで、いわゆるローファイ・ヒップホップをそのままやると、ほんとにバック・グラウンド・ミュージックになってしまうんですよ。でも自分が目指すべきところって、そのシチュエーションそのものを表現することである。それが自分の楽曲の主張となると思うんですね。曲から歌詞やエモーショナルな要素を引いていって本当にバック・グラウンド・ミュージックに徹しちゃうと、今度は「なんで自分がこれをやってるんだろう?」ってことになっちゃうので。

ーかつ、聴いていて感じたんですが、ローファイ・ヒップホップやチル・アウトと呼ばれている音楽って、古川さんがルーツとしてあげている90年代的なポスト・ロックやシューゲイザーとも、ある種のメランコリックな感触や、おっしゃるような夜の孤独感という意味で、実は接続できるものなんだと思ったんですね。エモーションのありかとして、単なる最近の流行りということではなく、時代を超えて人が音楽を求める時の感情のありかみたいなものに結びついているんだなということを感じました。

そう思っていただけると、すごくうれしいですね。シチュエーションとか心象みたいなものをどう表現するかということを考えるのが古川本舗の仕事であって、手法に関してはその都度おもしろいと思ってるものを使えばいい。そこを結びつけるのは絶対できるはずだという感覚はあるんですね。僕の中では、ポスト・ロックだろうが、シューゲイザーだろうが、ローファイ・ヒップホップだろうが、eastern youthだろうが、音楽というくくりの中では全部同じなんです。どれも感情を揺さぶる機能を持っているものとして分類できる。そこの種類には全く影響されないというか、どんな手法を取ろうが古川本舗になると思っています。

Rolling Stone Japan 編集部

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