古川本舗が語る、5年ぶりの活動再開と自主レーベル立ち上げの理由

ー古川本舗としての今の活動のやり方についても聞かせてください。「DONAI paris」という自主レーベルを立ち上げて、自分の事務所から発信している。今の時代においてはもはや珍しいことではないとは思うんですが、この形を選んだ理由は?

これについては、成功も失敗も自分のものでありたいという信念があって。当然、誰かのおかげで成功するのも全然OKだし、今もいろいろな人に助けてもらってなんとかやれているので、その人たちのおかげなんですけれど。でも、自分の意思と違うことをやってしまったりとか、出さざるをえなくなってしまった時とかに「あいつのせいで」みたいな感じになっちゃうのが、あまり好きではないんですね。どんな状況でもそうなんですけど、一度自分の中に取り込んで咀嚼して納得してしまえば、それはもう他人の意見ではなく自分の考えなので、自分の失敗として吸収できる。でも、大きなレコードメーカーさんとかと一緒にお仕事をさせてもらうと、何か一つの案件をやった時に、何が良かったのか、悪かったのかみたいな話をクリアにしきれないことも増えてくると思っていて。僕自身、20代の「武道館目指します!」みたいなバンドとかとは考え方が全然違うわけですよ。ありがたいことにお仕事は別にあって、音楽があろうがなかろうが、生活自体は成り立っている。そうすると、音楽に求めるものって、自己満足の究極みたいなことが欲求として大きいわけなんですね。その自己満足というのは音楽で成功するとか、そういうことではなくて。むしろ、成功も失敗も自分の経験として、自分の支配下に置きたい。そこから全部自分でやろうと考えました。そもそも、古川本舗を始めたときも、自分で曲を作って、歌詞を書いて、ジャケットも作ってたし、なんだったらMVも作れるわけで。そうすると自分でやれないのは宣伝と流通くらいだったんですよね。

ーこのインタビューを行っているのは「知らない」のMVと配信リリースがされた直後ですが、こうして自主レーベルでやってみての実感はどうでしょうか?

それこそニコニコ動画でやっていた時って、曲を作って、自分で動画らしきものを作って、自分でTwitterで宣伝して、反応を見たりしていたんで。「懐かしい!」って思いながらやってました。リリックビデオを出すというときも「やったことある!」みたいな(笑)。



ーそれこそ10年前のニコニコ動画の頃と、DIYという意味で本質的には変わっていない。

当時もそういうのが楽しかったですからね。売上的にどうのこうのというよりも「あいつが格好いいのを出したから、俺も出す」みたいな感じだったし。出したら、お互いTwitterで自慢しあったり、無駄に褒め合ったり、酒飲んで「あいつクソだな」ってけなし合ったりして。そういうのって、まあまあ健全だったんじゃないかなと思うんですよね。その感覚は好きだったし、やっぱり、作ってる側の人間の感覚は、たぶんそんなに変わらないんじゃないかなと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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