デイヴ・グロールが語る、ドラム・バトルで得た2020年最大のインスピレーション

アルバムを作る時に一番大切なのは「エネルギー」

ーデヴィッド・ボウイとローリング・ストーンズの名前が出ましたが、新作は彼らのダンス・アルバムとも言える『レッツ・ダンス』や『タトゥー・ユー』を彷彿とさせるところがありますね。

デイヴ:そうなんだ。デヴィッド・ボウイは、常に変化し、成長し、進化していったアーティストという意味で、良い例だと思うんだ。俺自身、初期のボウイが大好きで、スパイダース・フロム・マースも『ジギー・スターダスト』も「フェイム」も大好きだ。だけど『レッツ・ダンス』は別格で大好きなんだよね。『レッツ・ダンス』はスゴくシンプルなアルバムで、そんなにたくさんの要素が入ってるわけじゃなく、ドラム、ギター、ベース、ホーン、キーボードで作られてる、モータウンのレコードみたいな感じなんだけど、それをボウイは現代によみがえらせてる。シンプルなんだけど、新しいもの、カッコいいものとしてよみがえらせてるんだよ。だから、バンド・メンバーと話す時も、このアルバムを参考例として、「『レッツ・ダンス』みたいなアルバムを作ろう」、「今『レッツ・ダンス』みたいなのをやろうよ」って話してたんだ(笑)。

ーそれ、ヤバいですね。

デイヴ:ヤバいよね。まず何よりも、俺自身、エレクトロニック・ミュージックもディスコ・ミュージックも大好きだし、ファンクだって大好きなんだ。だから、フー・ファイターズが今までにやったことがないっていう理由だけじゃなかった。俺が好きな音楽はスゴく幅が広くて、アース・ウィンド・アンド・ファイアーも好きだし、プロディジーも好きだし、スクリレックスも好きだし、ケミカル・ブラザーズも好きなんだ。だから、身体が動くような音楽を作ろうってなった時に、オプションはたくさんあったんだよ。ただ、フー・ファイターズとして、俺にとって重要なことは、どうやって俺たちらしくやるかっていうことだったんだ。もちろん少しひねりを入れてなんだけどね。

ーそういうことだったんですね。確かに、デイヴの好きな音楽を反映して、いろいろな音楽の要素が入っていますね。タイトル曲の「Medicine At Midnight」にしても、ミディアムのダンス・ナンバーで、70年代のローリング・ストーンズらしさもあるし、ギターなんて『レッツ・ダンス』のスティーヴィー・レイ・ヴォーンを彷彿とさせていますよ。

デイヴ:そうそう(笑)。アルバムを作る時に一番大切なのは、エネルギーが間違いないっていうことなんだ。だから、レコーディングから感じるフィーリング、レコーディング場所から感じるフィーリング、すべての環境といったものが、音楽というアウトプットに影響を与えることになる。良い感じの場所にいて、良いエネルギーを持っていれば、それが自然と曲の中にも現れる。一方、暗い場所にいて、ダークなエナジーを持ってると、それだって曲の中に現れてしまう。だから曲をレコーディングする時に、徹底的に基礎から作っていこうと思って、まずはドラムから取りかかってみたんだ。リズムを決めて、こうやろう、こういうサウンドにしていこうって話して、そこからギターに取りかかって、最高のサウンド、最高のパターンを探し求めていった。そうやって基礎から積み上げて作っていくうちに、自分たちの音楽で自然と笑顔が生まれてきたし、バンドでグルーヴできるようになっていった。だから俺たちはそれをキープしたかったんだ。

アルバムの最後の曲「Love Dies Young」が一番良い例なんだけど、あの曲を書いてレコーディングを始めた時、スゴくシンプルに「♪ナーナーナナナナーナ♫」って感じで出てきたんだ。それって、今までに俺たちがやったきたことと変わらないし、おなじみフー・ファイターズの曲っていう感じだったんだ。でもそこでみんなに「いつものフー・ファイターズのリズムでやらないで、ABBAのリズムでやろう」とか言ってみたんだ(笑)。そんなことは今までにやったことがないからね。そこからドラムのレコーディングをしたんだけど、もう笑ってしまってね。ギターにしても、ギャロップのリズムでクイーンの「Keep Yourself Alive」みたいに、ジャンジャカジャンジャカ弾いて、ビルドアップしていったら、終わりの方ではもうジョークみたいになってたよ。音楽だけで笑顔になるようなことができたんだ。俺はギターのパートを担当したんだけど、誰かがこの曲を聴いて笑ってくれるのが待ち切れなくてね。だけどそういうエネルギーこそが俺たちが求めてたものなんだ。ハッピーのエネルギーっていうか、いい気持ちになる感じさ。単に居心地が良いだけじゃなくてね。本当にやるべきことなのかどうかわからないことをやるのって、最高のフィーリングなんだよ。俺たちは今までにやったことのないことをやりたかったし、本当にやるべきなのかはわからないけど、たぶんやった方がいいんじゃないかってことをやってみたんだよ。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE