デイヴ・グロールが語る、ドラム・バトルで得た2020年最大のインスピレーション

ナンディとのドラム・バトルで気づいたこと

ーそれにしても、新型コロナウイルスの影響ですべての予定が狂ってしまいましたね。

デイヴ:本当そうだよ。2020年の3月の時点ですべての準備は整ってたんだ。アルバムは完成してたし、アートワークも出来てたし、Tシャツも作ってたし、機材の準備もバッチリで、ツアーもブッキングされてた。今後2年間の準備はすべて整ってたんだよ。でもそれが全部ストップしてしまった。その時、最初にみんなが取った行動は、友達、家族、みんなが無事かどうかの確認だった。その後は、こんな状況にも何となく適合できるようになって、すべてについて新たな視点で考えることになったんだ。何年もの間、俺たちのバンドの最も大きな部分を占めてきたのは、ライブ・ショーとツアーであり、ステージに上がってプレイすることだった。それができなくなった今でも、クリエイティヴであるべきだし、何かを作るべきだし、前に進み続けなければいけない。だけどすべてが変わってしまった今、何をしたらいいんだ?ってなるよね。だからこそ、新しいアイデアに自分たちを適合させなくちゃいけないのさ。実は今回、俺がスゴく影響を受けたことがあってね。それはイギリスの10歳の女の子と俺との間で繰り広げられたドラム・バトルなんだ。

【動画を見る】10歳のナンディと52歳のデイヴによる本気ドラム・バトル

ーInstagramで見ましたよ。ナンディという女の子ですよね。

デイヴ:そうそう。ナンディのおかげで俺はかなりインスピレーションをもらえたんだよ。彼女のことは、TVでニルヴァーナの曲「In Bloom」を叩いてたのは見たことがあってね。10歳なのにスゴいドラマーだと思ったよ。彼女のエネルギーと情熱、それにドラムを叩いてる時に叫ぶのにもヤラレてしまったしね。その女の子が俺にドラム・バトルで挑戦してきたんだ。俺は「OK。楽しいじゃん」って思ったよ。そこから交互に曲をプレイしてバトルをやったんだ。俺が1曲叩いてチャレンジすると、次は彼女が1曲叩いてチャレンジするっていう感じでね。ちなみに、彼女に会ったことは一度もないし、知り合いでもない。彼女と俺の住んでるところは6000マイルも離れてる。そんな俺たちがこれをやった唯一の理由は、楽しみたかったからだし、その楽しさをみんなと共有したかったからなんだ。そこで俺は「つまりそういうことなんだな」って思わされたよ。毎日パソコンやスマホを見てると、「今日もまたこんなニュースか」とか、「今日は一体どういう一日になるんだ」って思わされるよね。だけどナンディを見たら、3分もすれば笑顔になれるし、楽しい気持ちに満たされるはずだ。俺はそこにスゴくインスピレーションを感じてね。音楽っていうのはこういうことのためにあるんだって、改めて思わされたよ。

俺たちは他の人たちに聴いてほしくて音楽を作るし、他の人たちに歌ってほしくて音楽を作るし、他の人たちに踊ってほしくて音楽を作ってる。それがフェスであろうと、5000人規模のライヴ会場であろうと、一人でいる自分の部屋の中であろうと、ワインを飲みながら踊ってる場面であろうと変わりのないことで、音楽を通してそういう楽しさを共有することこそ、俺たちがやるべきことなんじゃないかって思ったんだ。ナンディとドラム・バトルを始めてすぐに、俺たちのアルバムを出さなきゃってことに気づかされたよ。「OK、今すぐにアルバムを出さなきゃ」ってね。みんなが必要としてるのは、現実から逃避すること、解放されること、幸せを感じること、喜びを感じることで、音楽はそのためにあるわけだし、俺たちはそのために音楽を作ってる。この気づきこそが、2020年にもらった最大のインスピレーションになったね。

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