常田大希が語る「祈り」の真意

「まだ磨き続けなきゃいけないんだなって思うとうんざりする」

―『THE MILLENNIUM PARADE』のジャケットも、King Gnu『三文小説 / 千両役者』のジャケットも和のテイストで、「千両役者」の歌詞には歌舞伎(「楼門五三桐」)のセリフをオマージュしたフレーズもありますが、そういった「和」のモチーフを最近特に取り入れてるのはどうしてですか?

常田:トレンドになってますね、自分たちの中で。ミレパを構想するときに、日本の昔のワードだったり、妖怪、浮世絵とかいろんな文化に触れる時間がすごく長くて。King Gnuには今までそういうエッセンスはなかったけど、自然と全体のアートワークになっていきました。自分たちの最近のトレンドだと思います。



―ご両親はアートにも関心があって一緒に美術館にも行ってたと以前おっしゃってましたけど、幼少の頃から日本の文化にも結構触れられてたんですか?

常田:いや。ここ数年で急激に、そこを自然な形で掘り起こすような作業をみんなでしてました。

―今回のジャケットのアートワークは、浮世絵を2021年で表現するなら、というイメージですか?

常田:漫画タッチでもあるので、浮世絵というか……ゴッホが、日本のことを全然知らないからこそすごく憧れて、浮世絵と西洋のコラボレーション的な作品を作ったような、そういうバランス感は目指しました。

―ああ、それはミレパ全体に通ずるものでもありますよね。海外のクリエイターが音楽やアート、映画で描く「世界から見た日本」に目を向けながら、そこにアンチテーゼを掲げたり、もしくはオマージュしてみたりして、今現在日本で生きている自分たちがどう日本を描くのか、という。

常田:そうですね。結構コンセプトに近いと思います。

―今作は、音源からアートワークまで、一切の妥協なく作り上げられた達成感はありますか?

常田:うーん、どうだろう。現時点でのベストは出せたかなという想いはありますけど。それこそ、さっきの文武の話じゃないけど、各セクションの人間たちが年々かなりプロフェッショナルになっていて。ペリメトのアートワークのチームもそう。それがようやく仕上がったなっていうような認識は、最近あります。もう、どこへ出ていっても恥ずかしくないし勝負できるように、ようやくなったなって。「やりきったな」というよりかは、どっちかというとそっちですね。やりきってはいるんですけど、「スタート地点に立った」という体感です。

―外から見てると、もうだいぶ前にそのラインに立っていると思いますけど。

常田:ここ数年ちゃんとやってきたこととか真面目に取り組んできたことがようやく整ったから――それは社会的な立場も環境もそうですけど――これからどうしようかな、みたいな。こんな精度の高いアートワークも、俺らの中ではかなりやりきった感じだと思うから(目の前にあった完全生産限定盤の色校段階のものを見ながら)。そういうところまで伝わってるかわからないんだけど。

―いや、絶対伝わってると思います。

常田:まあそうね。伝わる人が年々増えてきてはいるという実感があるからこそ、クリエイター陣もやりがいがあると思います。

―「スタート地点」に立った先で、どういったことをやっていきたいと思っていますか?

常田:これを完成させるまでは、楽しいばかりじゃなかった。クリエイティブを徹底しきることの喜びと辛さを、本当に、俺個人的にもだし、周りのクリエイター勢も、しみじみと感じた1年だったので。まだ磨き続けなきゃいけないんだなって思うと、ちょっとうんざりしてますね。これから先が長すぎて。まあでも、やっていくだけというか。

―「天才」「鬼才」と言われている常田さんがクリエイションは苦しいというのは、すごく重みがありますね。

常田:宮崎駿さんが「映画の奴隷だ」って言ってたのは、誇張でもなんでもないと思うんです。なにに強制されてるわけでもないのに、本当に奴隷みたいな生活なので。でも俺に限らず、周りみんなそんな感じなので、かわいそうだなって。みんな幸せになってほしい(笑)。

―そう、常田さんの話聞きながらまさに、宮崎駿さんが絵を描きながら「めんどくさい、めんどくさい」って言ってた映像が思い浮かんでました(笑)。

常田:今回のアルバム制作で俺も10歳ほど老け込んだんじゃないかって思ってます(笑)。

―でも、その苦しみと、『CEREMONY』の制作時のようにベルトコンベアみたいに曲を作らなきゃいけなかったことの苦しみを比べると、今回の苦しみのほうが幸せなんじゃないですか?

常田:そうね、喜びも多かった気がしますね。とはいえ、大変なことを始めてしまったなという想いは相変わらずあります。

<INFORMATION>


『THE MILLENNIUM PARADE』
millennium parade
アリオラジャパン
発売中

【完全生産限定盤】
12inchスペシャルBOX仕様、初回限定盤(CD+Blu-ray)
オリジナル小鬼フィギア3体、構想盤(カセットテープ)
価格:10000円(税抜)

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:4500円(税抜)

【通常盤】CDのみ
価格:3000円(税抜)
=CD収録内容=
1. Hyakki Yagyō
2. Fly with me (Netflix Original『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)
3. Bon Dance
4. Trepanation
5. Deadbody
6. Plankton
7. lost and found(『DIOR and RIMOWA』コレクションムービーテーマ音楽)
8. matsuri no ato
9. 2992 (NHK スペシャル『2030 未来への分岐点』テーマ音楽)
10. TOKYO CHAOTIC!!!
11. Philip (『adidas CASUAL Collection 2020 Fall/Winter』)
12. Fireworks and Flying Sparks
13. The Coffin
14. FAMILIA (綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)

=Blu-ray収録内容=
※(完全生産限定盤・初回生産限定盤のみ)
millennium parade Live 2019@新木場 Studio Coastより、4曲(Fly with me, Slumberland, Plankton, lost and found)&MVを収録。

https://millenniumparade.com/

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