ソウルの幕の内弁当アルバムとは? アーロン・フレイザーのアルバムを鳥居真道が徹底解説

ドラン・ジョーンズ・アンド・ザ・インディケーションズというオールドファッションなソウルに取り組むグループがいます。デッド・オーシャンズ所属。つまりフィービー・ブリッジャーズ、クルアンビンとはレーベルメイトの関係。フレイザーは、ザ・インディケーションズの一員でドラムを担当しています。時としてマイクを握ることもあります。

フレイザーのテンダーなファルセット唱法を聴くと、強力なフロントマンであるジョーンズがしばしばマイクを譲るのも頷けます。とても魅力的な喉の持ち主です。そして声色の表情が豊か。歌という表現の中で、嘆いたり、笑ったり、怒ったり、泣いたりしていて、さながら名役者のようです。



『Introducing…』を通して彼の歌声を聴いていると、なぜだか郷愁に駆られます。ファルセットということで、スモーキー・ロビンソンや、テンプテーションズのエディ・ケンドリックス、デルフォニックスのウィリアム・ハート、あるいはフランキー・ヴァリを連想したりもしますが、後追いでこれらを聴いた私が懐かしさを感じるのはおかしな話です。もちろん後追いであっても、それを聴いていた当時を思い出して懐かしくなる場合もあります。しかしそれとも違う。

フレイザーの歌声には、どこか子守唄のような響きに感じられるのです。子守唄? あ、日本昔ばなしのオープニング曲か! とひとり膝を打ちました。そうか、あの女性デュオの歌声に似たものを感じて郷愁に駆られているのかと。しかし、この感覚がどれだけの人と共有できるのかは不明ではあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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