ソウルの幕の内弁当アルバムとは? アーロン・フレイザーのアルバムを鳥居真道が徹底解説

『Introducing…』は、ソウルの幕の内弁当といった趣のアルバムです。フィラデルフィア風あり、シカゴ風あり、デトロイト風あり、メンフィス風あり、ニュー・ソウル風あり、スタッテン・アイランド風あり、ヤング・ラスカルズ風あり、デンジャー・マウス風あり。こうした調子で列挙を続けると、なんだ、焼き直しかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。非常にフレッシュ。どのようにフレッシュなのか。

過去の音楽を解釈する手付きが新しいというより、過去の音楽が宿していたフレッシュさを身体化している、と言えば良いでしょうか。そうした人が現れる度に過去の音楽のフレッシュさがより鮮やかになると私は考えています。

「懐古趣味のレコードはマジで作りたくなかった」とはプロデューサーであるブラック・キーズのダン・オーバックの談。このアルバムは、彼のレーベルであるイージー・アイ・サウンドとデッド・オーシャンズの連名でリリースされています。レコーディングはオーバックが所有するナッシュビルのイージー・アイ・スタジオで行われたとのこと。また、ほとんどの曲がオーバックとフレイザーの共作となっています。もちろんギターも弾いています。

レコーディングには、ナッシュビルのミュージシャンやイージー・アイ周辺のミュージシャンが参加しています。注目すべきは鍵盤奏者、ボビー・ウッドでしょうか。彼はメンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオのお抱えミュージシャン連であるメンフィス・ボーイズの一員です。ダスティ・スプリングフィールドの名盤『ダスティ・イン・メンフィス』に参加しているようなレジェンド級のベテランミュージシャンです。

Rolling Stone Japan 編集部

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