ソウルの幕の内弁当アルバムとは? アーロン・フレイザーのアルバムを鳥居真道が徹底解説

『Introducing…』の演奏において特に惹きつけられたのはベースのプレイでした。演奏するのはニック・モブション。エイミー・ワインハウスやブルーノ・マーズといったマーク・ロンソン絡みの仕事や、ニューヨークの粋なレーベル、ビッグ・クラウンを主催するレオン・ミシェル周辺の仕事などで知られるベーシストです。アフロ・ビートのグループ、アンティバラスにも参加しています。個人的にはグリー・クラシックスでもあるマーク・ロンソン feat. エイミー・ワインハウスの「Valerie」で演奏しているのを見逃すわけにはいきません。

ソウルやファンクのような演奏をマスターしたいと考えているベーシストがいたら、このアルバムのベースラインを完コピすることを強くオススメしたい。彼のプレイはさしずめ歩くソウル百科といったところで、ジェームス・ジェマーソン、ジェリー・ジェモット、ウィリー・ウィークス、ドナルド・ダック・ダン、デヴィッド・フッド、トミー・コグビル、ジョージ・ポーターJr、キャロル・ケイといったレジェントたちのエッセンスが詰まっています。縁の下の力持ちというよりは、比較的饒舌なプレイでぐいぐいと引っ張っていくタイプかもしれません。

ここで一度『Introducing…』から「Bad News」を聴いてみましょう。



まずドラムのフィルから始まります。最初のフィルを素っ気なく感じたのか、あるいはテンポが早すぎたと感じたのか、情感を込めつつテンポを落として同じパターンをやり直しています。その後にビートが演奏されるわけですが、ドラムから始まるアレンジなので、冒頭のフィルはカットしても良かったように思われます。しかし、この余計とも言えるふたつのフィルがフックになっているようにも感じます。フックということでいえば、ベースのフィルイン明け(0:27あたり)の音を聴き逃がすわけにはいきません。

Rolling Stone Japan 編集部

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