細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」、音楽本特集Part4。2020年末に文藝春秋から発売された門間雄介さんの本『細野晴臣と彼らの時代』を素材にしながら、細野晴臣さんの特集を送りしました。流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。

細野さんの50年をこんな風に一冊の本にまとめられた。拍手でお送りしたい、そんな本です。「J-POP LEGEND FORUM」は2014年4月に放送を始めたんですが、そのきっかけになったのが大滝詠一さんが亡くなったことでした。そういう日本の音楽シーンの立役者が他界していく時代が来たんだな、そういう人たちの軌跡や功績を辿れる番組をやろう、ということでこの番組が始まりました。最初の一ヶ月の特集が大滝詠一さん。それ以降、はっぴいえんどは様々な形で登場したり、取り上げたりしてきているわけですが、細野さんの特集はずっとやってみたい、やらなければいけないという想いがありました。でも、どんな風にやればいいんだろう? これは手に負えないんじゃないか? と思って今まで特集を組まないままになってしまったんです。ですから、この本を最初に読んだ時によくここまで取材して書き切ったな、と頭が下がりました。同業ですから、時にはライバル心みたいなものも感じたりすることもあるんですが、今回はそういうのは全くなくて、恐れ入りました、お見事でしたという感じがありました。



改めて今月、サブスクの時代に音楽の情報はどうあるべきだろう? と思ったんですね。今回の本の中にも、今まで聴いてこなかった作品があったんですが、今CDを手に入れて聴こうとすると結構大変な作品もサブスクにはある。つまり、本を読みながらこのアルバム聴き直してみよう、ということがすぐできる。そういう音楽情報がたくさんある中で、音楽について書かれた本はどうあるべきか? 本当に音楽を整理して、音楽に関するきちんとした情報やストーリーを提供するべきなのではないか? というのが、今月の特集の大きな動機になっています。今回の細野さんの本は、こんなに役に立った本はなかったというくらいの本でした。そういう意味では、いい時代になったのかもしれません。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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