細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く

田家:何しろプロローグで登場してくる人物が星野源さんでありまして、第一章が1968年、今仰った自宅を大滝詠一さんが訪ねるところから始まっている。これだけでもう拍手ですよね。それは実際に大滝さんが訪ねた時はどうだったんだろう? と想像しながら書かれたんですか?

門間:細野さんの家がどういう間取りだったか、どのように道に面していたのかなどを、今確認できる写真を見ながら、書くというより描写するという感覚で書いていきました。

田家:それは何処かから資料を探してきたんですか?

門間:港区の過去の写真を集めた本だったり、港区の図書館に行って。その図書館にしかない地図とかを掘り起こして見てみたりしたのは役に立ったなと思いますね。

田家:なるほど。いきなり細野さん本人の話をたくさん聞いて、本人の話を並べていくという作り方ではないというのが、この本が素晴らしいと思った要因の一つなんです。この本には色々な人が登場してくるでしょう。彼らの登場の仕方、させ方とか、その人たちがどう動いていったのかを書いていこうと思ったのもその時から浮かんでいたんですか?

門間:最初は細野さん個人の歴史を辿るというところに主眼があったんですが、どう取りかかればいいのか。インタビューを進めていって毎回話は面白いんですけど、どう構成すればいいのかはなかなか見えてこなかったんですよね。その中で初めて林立夫さんに関係者としてインタビューしたときに、林さんなりの考え方というのが聞けて。その時に初めて、細野さんの行動の裏側が見えることによって、行動自体のロジカルな筋道がようやく見えてきた。これはやっぱり、関係した方々の心境を書かなければ、細野さんの本当の歴史は辿れないなという風に思って、"彼ら"という部分にも重きを置くべきだと思ったんです。

田家:エイプリル・フールや、はっぴいえんどの周辺にいた人たちのことも克明に取材されていて。はっぴいえんどの結成の部分、98ページでお書きになっていた「新たなバンドを巡る決定的な動きはこの一週間に満たない間に起こった」と、出来事が時系列でありながら、いろいろな人たちが絡み合って登場していますね。

門間:細野さんは最初小坂忠さんとバンドを組もうとしていたんですけど、小坂さんがヘアーという舞台に立つことになってやめて、代わりに大滝さんが入るわけですね。そのことはこれまでも触れられてきたんですけど、実際に時系列に見ていった時に、一週間の出来事だった。細野さんはよく「まず何かが起きて、考えはその後からついていったんだ」と仰るんです。確かにボーカルが変わることがたった一週間の中で起こった出来事だって分かると、細野さんの言っていた事が確かにそうだと分かる。物事が起きて、細野さんはある意味巻き込まれている。首謀者ではあるけど、巻き込まれざるを得なかったんだということが分かってきた気がします。

田家:なるほど。それがどんな一週間だったのかは、実際に本でご覧ください。続いて門間さんが選ばれた二曲目は、1976年発売ソロの3枚目のアルバム『泰安洋行』から「蝶々-San」。

Rolling Stone Japan 編集部

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