細野晴臣の50年間に及ぶルーツ ノンフィクション本とともに読み解く



田家:この曲を選ばれたのは?

門間:これはYMOの後に細野さんがソロ活動をしていく中で、アンビエントの方向に進んでいって。先ほど仰ったように、僕もこのYMO以降の時代があまり語られてこなかったと思って、重要なところです。特に細野さんの精神の遍歴を追うときに一番重要なのがこの時代だなと思っていて。特にこの曲はその代表的な部分だと思うんです。ここをインタビューでも丹念に訊いた記憶があります。

田家:細野さんは、1984年にノン・スタンダードとモナドという二つの新しいレーベルを始めていて、とても実験的な音楽でした。その中にアンビエントがあって。観光音楽というのもこの時に作られ始めているんですね。

門間:この時に細野さんは、広がりつつあったワールドミュージックのブームを先取りする形で自分の音楽に取り入れてきたんですよね。一方で、この時期の音楽ビジネスの広がりと自分の音楽との間に細野さん自身がなかなか整合性を見出せずに、どんどん追い詰められていくような状況になっていく。そこで生まれた音楽を改めて聴いてみると、実はいろいろな発見があると思っています。

田家:そこなんです。376ページに「音楽に対しての気力を失っていた」という記述がありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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