大木亜希子と手島将彦が語る、エンタメ業界で生きるための精神とお金の話

手島:大木さんの著書を拝読して、これは絶対に学校の図書館に置いてあればいいなと思ったんです。

大木:ありがとうございます。すごく嬉しいです。

手島:というのも、僕が取り上げている3つの大事なテーマと共通している部分が多くて。1つ目は自己肯定感の持ち方、2つ目はアイデンティティに関する考え方、3つ目は今が大切だよねということ。その3つが特に『アイドル、やめました。』(※AKB48グループを卒業しセカンドキャリアに挑む元アイドルたちを、取材したノンフィクション)のエピソードによく出てくるなと思ったんです。大木さんが話を訊かれた元アイドルのみなさんは、まず弱い部分や苦手なことを自覚した上で、紆余曲折しながら自分の存在自体を肯定していく。それがとても素晴らしいなと思ったんです。あと、アイデンティティの考え方で、「大切なのは今なんですよ」と複数の方が言っている。もちろん過去があるから今があるということなんですけど、今を大切にすることはメンタルヘルスを考える上で大きなキーワードなので。

大木:本の序文にも書いたんですけど、アイドル時代の自分を成仏させたいという極めて個人的な思いから始めた企画が、出版社の手を通って元アイドル8人に共鳴していった。芥川賞作家の羽田圭介先生が、「他者と理解し合っていくことが人間の1番の快楽である。この本のおもしろさはアイドル時代の裏話ではなくて、同じことを経験している人間として、大木さん自体が他者と理解し合って快楽を得ていくことだ」という趣旨のコメントをくださって、私自身もなるほどなと思ったんです。手島先生は、現在の自分の存在を肯定していくことを、『なぜアーティストは壊れやすいか』の中で、車の運転に例えられておっしゃっていましたよね?

手島:ええ、はい。

大木:運転しているのは今の自分で、過去の自分から乗り継ぐ形で未来に向かって進行していく。私は体を壊したときに身を以ってそれを理解したんですが、まだ理解できていない若い子もたくさんいると思うので、そう言葉にして発信してくださることは、すごく救いですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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