澤野弘之が語る、職業作曲家として大事にしている3つの要素

「音楽を始めたきっかけはCHAGE and ASKAのASKAさん」

―澤野さんは歌詞も書いていますけど、どういう世界観を意識しているんですか?

表現が違うだけで、基本的に僕の歌詞はほとんど同じ題材なんですよ。自分の音楽活動や世の中の状況を見た上で思うことを「前向きにしていきたい」という気持ちを込めて書いていますね。

―確かにポジティブな歌詞ですね。

僕はネガティブな気持ちで終わるのが好きじゃないので、自分を奮い立たせるために書いているところもありますね。もちろん、人に読んでもらっていろんな気持ちになってもらうのもありがたいんですけど、僕は歌詞を抽象的に書くし、自分の言葉をお客さんにメッセージとして届けたいという気持ちはほとんどないんです。だから、歌詞を読んだ人が僕の意図と真逆に受け取っても全然構わないし、自由なイメージで聞いてもらえたらいいし、歌詞は音の響きやグルーヴの面で考えているところも大きいので、たまたま1行だけ心に響くぐらいでも構わないという気持ちですね。

―なるほど。

自分が思っていることをダイレクトに知ってほしいというわけでもないので、気づいた方にわかってもらえたらいいかなという気持ちです。

―すべてを知られるのが怖かったり?

ダイレクトに知られて変に憶測されるのが怖いというのもありますし、考える余地があってほしいんですよね。僕の偏見かもしれないですけど、今って一言一言ちゃんと説明しなきゃいけない時代だと感じるんですけど、そうではなくて、一人ひとりがその言葉から「これはこうなんじゃないか」と思いを巡らすような余白が大事だと思うんです。だからそういう抽象的な書き方をしているところもあるかもしれないですね。僕、音楽を始めるきっかけがCHAGE and ASKAのASKAさんなんですけど、多分、ASKAさんの歌詞も僕が間違えて理解しているところがいっぱいあると思うんですよね。でも、それで勇気づけられたこともたくさんあったので、自分で歌詞を書く上でもそういうことができたらと思っていますね。

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―なるほど。

あと、僕は作曲家という意識が強いので、人の音楽を聴くときも単純にサウンドと歌声とメロディでカッコいいかどうかを判断しているんですよ。日本の曲を聴くときも歌詞にはそんなに重点を置いてなくて、音として楽しいかどうかを気にしていますね。だから、自分がつくる音楽で一番重要視しているのもその3つの要素で、歌詞も響きとして聴いてほしいところがあるんです。

―最近は歌詞を重視する若いリスナーが多いといいますね。

そうですよね。こないだ、松本人志さんの番組を観ていたら甲本ヒロトさんが出ていて、「最近の人たちは歌詞を聴きすぎだと思うんだよね」とおっしゃっていて、それは自分の考えにも近いところがあるなと。甲本さんみたいな方がそういう視点を持っていることに勇気づけられたところはありますね。

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