moumoon・YUKAと手島将彦が考える、アーティストが「悩みを相談できる場所」

ーここ数年メンタルヘルスに注目が集まって、関連イベントや番組にも手島さんは出演されてきました。YUKAさんの周りでは、メンタルヘルスに関する関心を持つ人が増えてきた実感を感じられますか?

YUKA:実際に助けが必要だと仰っている方も増えたように思いますし、そういったことに興味を持って勉強してみたいとか、本を読んでみたという話をしてくれる友達が音楽業界の中で増えてきたような気がしますね。

ーYUKAさん自身も関心を持って、大学院に行かれているわけですもんね。表舞台に立つミュージシャンという職業につきまとう辛さの原因もたくさんありますが、一番苦しむ人が多い要因はなんだと思いますか?

YUKA:ミュージシャンの大きな仕事としては、楽曲を作るのがマストじゃないですか。頭を使ってアイディアを出すということも大変だし、ツアーをしながら曲を作る人だっている。その両方が上手く噛み合わなくなっちゃう場合もあると思うんです。さらに、最近はSNS更新も義務みたいになってくると、24時間休みがないんじゃないかと思うんです。手島さんの本や連載でも出てきましたが、私は感情労働という言葉が気になっていて。頭を使ってクリエイティブな労働に伴う感情の部分。それと、お客さんと対面をしてライブをしたり肉体労働の間で不一致が生まれてしまうこともあると思うんです。自分の気持ちは今ハッピーじゃないけど、世の中が求めているハッピーなメッセージを発信しなきゃいけない義務感に駆られて、無理しちゃう人もいるかもしれないですし。色々なことの相互作用でストレスが大きくなっていっていると思います。

手島:エンタメや音楽だと感情労働のウェイトはどんどん高くなってきているのに、それに対してのケアがまだ追いついていないのが現状だと思います。僕が個人的に音楽業界で危惧しているのが、最近は特にK-POPの成功もあって、SNSを駆使して強いファンの集まりを作って、そこにどんどん日常生活も切り取って出していく。ファンの人もUGCとして色々なものを作って、拡散していくのが一つのビジネスモデルとして上手くいった。それが正しいみたいな雰囲気があって。ビジネスの方法論としてはアリだとは思うんですけど、やはり大変なことなんですよね。YUKAさんも仰ったように、感情労働も含めて24時間ずっと仕事みたいな話にもなるでしょうし。なので、具体的なアーティストそれぞれに対するケアも大事だと思います。もし一緒に盛り上がっていくスタイルなのであれば、ファンの方と一緒にメンタル的なことも学んでいくというのをセットにすべきかな、と思っています。アーティストの方から、メンタルヘルスの大切さを発信して、リスナーの方と一緒に学んでいくことで良い空間を作ることを前提にやっていかないと、単にミュージシャンがつらいことになっちゃうと思うんです。ファンの方からも、メンタルヘルスの大切さが発信される空気を作っていければいいなって考えていますね。

ーミュージシャンは商品じゃないし、消費されないためにちゃんと発信していかないといけないんですね。

YUKA:先程私が話した、弱音が吐けなかった、走り続けなきゃいけないことについても思ったんですけど、「もしかしたら今自分は曲作りのために数ヶ月間休む必要がある」みたいなことを、海外のアーティストみたいに公言できるオープンな関係になれるというのは、すごく良いことなんじゃないかなと思います。

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