moumoon・YUKAと手島将彦が考える、アーティストが「悩みを相談できる場所」

ーある程度メンタルヘルスの基礎知識は知った上で、かつ音楽業界だったらスタッフが各ミュージシャンにそれぞれの人に合った接し方ができればベストだし、そこから対等な関係も生まれてくるかもしれませんね。

YUKA:音楽業界こそ、そういう部分がフレキシブルであってほしいし、そこが変わっていったら違う業界にも大きな影響がありそうな気がします。

手島:本当にそう思います。前にピエール中野さんと話した時も、他人って最強ですよねって仰っていて。他人だからこそ逆に相談しやすかったりとかするんですよ。今後は、レーベルとかがその役割を担っていけるといいんだろうな、という気がします。あと、音楽産業ってそもそもの産業規模は大きくないんですよね。2019年だとライブ・エンタテインメント産業の売り上げが6295億円で前年の缶コーヒーの売り上げと同じくらい、音楽ソフト・配信の売上と合わせても7822億円で、ゴルフ場の売上8540億円より少ないくらいなんです。でも、音楽産業はその産業規模の金額だけでは測れない、世の中や人生に影響を与える大きな力を持っていると思うんです。むしろそこに大きな価値と意義があるとも思います。世の中に対して良い影響を与えることも絶対できるはずなんです。

YUKA:たしかに音楽業界はとても豊かなことをやっているけど、意外と見返りが少なかったり、皆が身を粉にして働いているけれども、どうして音楽の業界がもっと豊かにならないんだろう? って皆が思っていると思うんです。そこがもっと自由で、多様性が認められたりとか、困ってる人にちゃんと手が差し伸べられる。そういう業界に変わっていくということがの世の中への大きなメッセージになるような気もしますね。

ーYUKAさんは大学院でも臨床心理士の勉強をされていて、今後どういった取り組みをされていきたいと考えていますか?

YUKA:私は悩みを抱えている人が話せる場所を作りたくて。以前の手島さんの対談の冒頭にも書いてあったんですけど、海外では電話でカウンセリングができたり、アーティストに向けたサポートが生まれてきていて。アーティストだけじゃなくても、マネジメント業務をやってる人、制作に携わってる人にも、匿名じゃないと話せないような悩みってたくさんあると思うんです。そういう悩みを相談できる場所を作りたいんですよね。絶対必要だと思うんです。

手島:ヨーロッパやアメリカで作られているシステムをそのまま日本に持ち込んでも、上手くいかないだろうなという感じはあるんです。参考にはできるけど、そもそもの土壌が違うというか。イギリスなんかだと、ミュージシャンの労働組合的なものが全部そういう問題を引き受けているケースもありますし、お金に関することや啓蒙活動などに関しても、例えばエド・シーランに協力してもらうんだ、みたいなことがあるわけですよね。成功しているミュージシャンがメンタルヘルスに関心が高く、チャリティーなども含めて協力的です。お金のないミュージシャンでも24時間無料でカウンセリングが受けられるんだよっていうのは、メンタルヘルスへの意識の高さと、ミュージシャンにはそういうケアを受ける権利があるのだ、という強い認識があるからでもあって。でも、今すぐそれと同じことを日本でやるのは難しいんだろうなと思った時にどういう形がいいんだろう? と思いますけどね。

YUKA:そういったことをやりたいと思っている人たちが、それぞれ立ち上がって一緒に取り組んでいける場所ができたらいいんだけどなって思っています。

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