DEAN FUJIOKAが語る、ルールが変わった世界で表現する音楽と絵本

―4月9日に自身初となる絵本『ふぁむばむ』を発売されますね。こちらはどんなきっかけで生まれた作品なんですか。

まず2016年に遡るんですが、当時ファンクラブを立ち上げることになったときに、既に絵本は作ろうと思っていたんです。ただ、ファンクラブというものに違和感を感じていて、そのコミュニティ自体に存在意義がないとやりたくないなと、『ふぁむばむ』という名称のファンクラブを立ち上げたんです。その日が自分の誕生日だったこともあって、もし祝っていただけるのであれば、家に余っていたり保存が効く食品を寄付していただけませんかと、みなさんに協力してもらって、約1.5トンの缶詰や保存食をフードバンクとしていただいた。それをフードドライブという形で必要としている人たちに届けたのがスタートだったんです。『ふぁむばむ』という名称は、広い意味での「家族とはどういったものなのか」という概念を込めて命名したこともあって、そういう活動が出来たらいいなと思ってやってきました。ただ途中からファンクラブ的な面が強くなってきちゃって、もう一度正さなきゃいけないという気持ちもあったし、あとはやっぱり絵本を通して『ふぁむばむ』の理念を現実社会とどう接点を作っていくかが、当時のタイミングでは難しかったんです。すごく時間をかけて、自分のビジョンを共有して、それができるチーム作りをして。その中で、今回セーブ・ザ・チルドレンさんに協力していただいて、クラウドファンディングの形でこの絵本を媒介にして、その中から未来を担う子どもたちに対して循環するエコシステムみたいなものを設計することができました。

―絵本の内容自体はどんな思いを込めて作られたのでしょうか。

音楽の話でも触れたところなんですけど、相互扶助とか愛し合うとことか、お互いを尊重しあうことは、言葉としては綺麗だし、誰でもそうした方が良いのはわかってるわけじゃないですか? 具体的にそれをどうしたら良いのかって話だと思うんですよ。意思の疎通をするときや双方向をつなげるときって、どちらも歩み寄らないといけないわけで、その距離を埋めるのはお互いの相手を思う想像力だと思うんです。想像力を使ってそれを行動に移すことで、共感できる。想像力を媒介して具体的に何をしたら良いかが生まれる。その力がどうしたら鍛えられるかを主軸に置いて作ったんです。だからあまり、「愛し合うことは素晴らしいです」とか自己啓発っぽい内容は書いてないんですよ。「こうすべきです」みたいなことは全部省いて、一つの絵と言葉を見て、「これはなんなんだろう? もしかしてこういうことを言いたいのかな」っていうものの連続性なんです。そういう風に考えるきっかけを作れるような絵と言葉、その並べ方にコンセプトを置いて作った絵本になっています。

―その中の言葉が、DEANさんの楽曲の歌詞から使われているわけですか。

もちろん、自由に自分が言いたいことをそこにはめても良かったんですけど、立ち返ると、自分の音楽活動があったことで『ふぁむばむ』 を作ろうというきっかけになったこともあって。あとは、ゲーム、トリビアというか、「あ、じつはこれはこうだったんだ!?」っていう楽しみ方、1つ1つひも解いていくトランスメディアでのエンターテインメントの見せ方にこだわった部分でもあるんですね。だから敢えて歌詞縛りにしていて。それでちょっと難易度が上がったんですけど、音楽、絵本、もしくは最初にグッズで「ふぁむばむモンスター」というものを作り始めた。そういうマーチャンダイジングだったり、メディアをトランスしていく中でストーリーテリングをしていくことにこだわった故にこうなりました。本当にエンターテインメントな作り方をしています。

Rolling Stone Japan 編集部

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