錦戸亮が語る「さすらいの道」

錦戸亮の作曲スタイル

ー前作に収録されていた「オールドスクール」にはアイリッシュ・ミュージックっぽい風味がありましたけど、今回だと「I don’t understand」はカントリー・ミュージックの郷愁のようなものがあったりして、そういう渋味も錦戸さんの音楽の特徴の一つですよね。ただの明るいポップスではないというか。

錦戸:武道館でやってみて、1人で弾き語りできるような曲を増やそうと思いました。大概いつもギターで弾いて一回歌ってはいるけど。

ーそういう意味だと「ハイボール」はまさにそういう曲ですね。「微睡」も弾き語りが似合いそう。

錦戸:実は「I don’t understand」「ハイボール」「微睡」は武道館の後に作った曲です。1~2日くらいで書いて。

ーそういう時って歌詞も一緒に浮かんでくる感じなんですか?

錦戸:曲によりますね。それこそ「ハイボール」はすぐでした。歌いながら歌詞とメロ考えて。歌詞はスマホで入れて、コードはノートに書いて、みたいな。



ーその3曲が一気に降りてきたと。武道館後でインスピレーションが湧きやすい状態にあったんですかね。

錦戸:その日ははかどりましたね。そんな日ばっかりならいいのにって思いますけど(笑)。

ー赤西さんは「よし作ろう」って決めて曲を作るタイプだって言ってましたけど、錦戸さんはまた違いそうですね。

錦戸:そうですね。「よし作ろう」でちゃんとできた試しがないですね。何も考えてない時にできるか、死ぬほど締め切りに追われてる時か、どっちかですね(笑)。歌詞を悩んでる時って、自分自身と向き合う時間がめちゃくちゃ長くなるというか。これを伝えたいんだ!っていう大それたものがなくても、この言葉だけは絶対使いたくないなって部分はあったり。カッコいい言葉をカッコ悪く使ったり、その逆にカッコ悪い言葉をカッコよく聞こえるように使ったりすることも、前後の作り方次第じゃないですか。そんな風に言葉を選んで作る曲もあれば、素直に書いても全然恥ずかしくない曲もありますし。歌詞を考える作業は、「あ、俺ってこれは言葉にしたくなかったんや」って気づける場面でもあるんですよね。

でも最近、日常的に何かを言葉にする、つまり普段からアウトプットが上手じゃないと、曲を作ったりする時に時間が余計にかかるなってすごい思います。ただ、それができたら正解なのかっていうとそうでもない気もするので、何事もバランスですかね。

ーさっき言ったように1~2日で曲ができる時もあれば、いつまで経ってもなかなかできない時もあるんですね。

錦戸:あります。「若葉」がそうですね。はじめはこんなポンポン進むんやって思ったけど、歌詞書いてみようと思ったらどうしようかなって止まってしまって。もともと5、6年前くらいに作った曲なんですよ。歌詞の場合、ときを経て出てくるものもあるので、今回アルバムで使うことになって、一応書けたつもりではいるんですけど。それこそ去年作った曲でも、ちゃんと形になりきれてないやつがいっぱいありますし。でも過去に作った曲を肉付けするよりも、ゼロからパッと思いついたものをその時の熱量で作る方が早いんですよね。置いておけば置いておくほど、消化するのに時間がかかるというか。硬なってもうてるんでね。顎疲れちゃうんですよ。



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