岡林信康がぶっ壊そうとした「フォークの神様」のレッテル

(スタジオ)

田家:テレビに出ないアーティストもいるわけですが、なぜTVに出ないんですか? という答えが今の岡林さんの発言でしょうね。そんなに有名人扱いされるのは居心地が良くないとか、普通の人として暮らしたいというわけでTVに出ないんですね。岡林さんはフォークの神様と呼ばれない場所を求めて、山村に引っ越してしまった。松本隆さんは、今回のアルバム『復活の朝』にライナーノーツを4ページにわたって書いています。これがいい文章なんですよ。その中に「日記のような、私小説のような、デビュー当時から変わっていない岡林の世界」と書かれています。そして、「老年になってからの日常を記して生と死を表現するのは小説ではある。歌にはなかった」と書かれているんですね。今回のアルバムは、今年75歳になろうとする岡林さんの身の回りの出来事が歌になっております。今回のアルバムジャケットは、岡林さんのお孫さんが描いたんですね。「みのり」にもおばあちゃんという言葉が出てきましたが、それは岡林さんのお母さんのことでもあります。アルバム『ラブソングスで演歌からフォークに戻ってきたんですが、コロンビアからはもう一枚アルバム『セレナーデ』を出しています。これはポップスアルバムなんです。その中から「メイキャップお嬢さん」を聴いていただきます。そして、インタビューを挟んで、ビクターでの1枚目のアルバム『街はステキなカーニバル』から「Good-bye My Darlin」をお聴きください。



(インタビュー)

岡林:演歌をやったことで俺の中にはタブーがなくなったよね。弾き語りもやるし、アメリカン・ポップスだってラジオにかじりついて聴いてたんだから、その影響を受けてないわけはない。そういうことをやるには、フォークの神様というレッテルをぶっ壊したいというのもあったと思うよ。俺をフォークの神様だと思っている人が眉を潜めるようなことを敢えてやろうという意地悪な気持ちもあったりして。長い間、自分はフォークの神様というレッテルを貼られ、フォークという狭いところに押し込められたことを自分の悲劇だと思ってたけど、逆だと思うんよね。フォークの神様というレッテルをぶっ壊してやろうと思って、色々なことをやれたし、それが原動力だったかも分からんから。ここまで前向きにやってこれたのは、フォークの神様って言われてたからかも分からんよな。今は感謝して喜んでますけどね。当時は必死でぶっ壊してやろうと思ってるから、ちょっと力入ってるね。

Rolling Stone Japan 編集部

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