和田たけあきが語る、メインストリームに近づくボカロシーン

ーネットクリエイターの方々に限らず、サブスクリプションサービスが使われるようになって、短い曲が増えたり、音楽のジャンルだとシティポップとか一昔前のものが流行していたり。そういう変化と、ネットクリエイターの方々のメインストリームは違うものですか?

むしろ、今まで全然違っていたものがだいぶ近づいてきている感覚ですね。ざっくり言うと、今のJ-POPで流行ってる音にボカロが寄っていっている感じがします。やっぱり、ボカロって映像が大事で、YouTubeでMVをあげるのが基本なので、映像の流行との親和性もあるのかなと僕は思っています。例えば、映像面で言うと、ヴェイパーウェイヴみたいな表現だったり、1980年代リバイバルとか、ちょっと古めかした表現が最近は流行っていると思うんです。そういう映像と、一昔前のボカロで流行っていた音数がめちゃめちゃ多い+速いテンポの曲調では合わないからではないかと。だから、映像に限らず、クリエイティブな界隈全般での空気感がそうなってきている感じはしますね。

ー和田さんがお好きな西川進さんは感情直結型ギタリストと形容されることがあると思うのですが、一方ボーカロイドは打ち込み音楽で、僕的には無機質なイメージがあって。そこは相反するものとしてお考えですか?

この感覚はちょっと世間とズレがある自覚はあるんですけど、僕はボーカロイドが無機質だと思ったことは一度もないんです。僕はあまり歌に興味がなくて。音楽の中での歌に興味がないと言うと言い過ぎなんですけど、音楽を構成する要素の1つだと思っています。世の中のリスナーは、歌に付随するものとして、他の音も聴いていると思うんです。僕はボカロだからと言って声質の違いも、声の良し悪しも分からないんですよね。悪いメロディは分かるんですけど、良いメロディが分からなくて。なので、僕は音楽を聴く時の感覚が、人とかなり違うと思います。逆に考えると、人間の歌に対して、あまりエモーショナルなものを感じてないとも言える。人間とボーカロイドの歌の違いが分からないので、ギターがエモーショナルだろうが、そうじゃなかろうが、それもオケのバリエーションの中だから、別に関係ないですね。

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