スティングが語る「多様性」と「好奇心」 多彩なアーティストとのコラボ作『デュエッツ』を聴く

フランスに対する強い憧憬

中でもスティングが思い入れたっぷりに話すのは、2018年10月1日に94歳で逝去したシャンソン界の第一人者、シャルル・アズナヴールとのコラボレーションである。90年代にスティングは、シャルルを自宅に招き入れ、彼の代表曲である「恋は一日のように」を一緒に歌ったことがあった。当時スティングは40代。27も歳の離れた大ヴェテランのシャルルに必死で食らいつきながら、「学生時代に7年間習った」というフランス語を使いながら歌う様子が、聴いていると目の前にありありと浮かんでくるようでなんとも微笑ましい。

「彼(シャルル)はアイコンだ。シンガーそして俳優として、シャンソンの第一人者という意味でも。そんな彼と一緒に歌えたのは本当に大きな名誉だったよ。どれほど素晴らしい曲だったかを忘れていたが、実にラヴリーな曲だ。いつまでもその思い出は僕の心に残っていくだろう。2年前に彼の訃報を聞いた時は本当に悲しくて、お悔やみの言葉を述べさせてもらったが、一緒に歌うことができたことをとてもありがたく思っているよ」



シャルル・アズナヴールの他にも、エスニックなパーカッションが印象的な楽曲「ストーレン・カー」でデュエットしたミレーヌ・ファルメールや、どこか「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」を彷彿とさせる楽曲「レスト」でコラボしたラッパーGIMSなど、今作にはフランスのアーティストとのコラボが目立つ(いずれの楽曲も、当時フランスで大ヒットを記録)。そこにはスティングの、フランスに対する強い憧憬が窺える。

「僕自身、フランスの文化、言葉、シャンソンを愛しているので相思相愛だ。フランスの音楽の歴史も知っているつもりだし、ジャック・ブレルも大好きだ。だから少しだとしてもフランス語で歌える機会、もしくはフランス人アーティストと歌う機会があれば、名誉なことだと思ってやってきた。こうして今もパリにいる。第二の故郷のになった感もあるよ。今この時期はパリに住んでいるんだ」

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