スティングが語る「多様性」と「好奇心」 多彩なアーティストとのコラボ作『デュエッツ』を聴く

「僕を駆り立てる原動力は好奇心」

冒頭で述べたように、本作はロックダウン中にメロディ・ガルドーと行った「リモート・デュエット」がきっかけとなり編纂されたアルバム。例えばズッケロと歌った「セプテンバー」は、変わらない日常が続くロックダウンによって曜日の感覚も、季節の移り変わりも曖昧になってしまうなか、「雨でも降ってくれ、何か違うことが起きてくれ」と祈るような気持ちで作られた楽曲だ。

「色々なことを考えたり、曲を書いたりした。何が言いたいのか、何を言うべきなのかを考えたが、同時に何も言うべきではないと思うことが多かった。今のこの騒音だらけの世の中に、これ以上は加担したくなかった。なので、むしろ自分の中で深く考えることの方が多かった」



本当なら2020年は、ヨーロッパ各地でのツアーを行い、ラスヴェガスでのレジデンシー公演、舞台『ザ・ラスト・シップ』の上演などが予定されていたスティング。すべてが中止となり、スケジュールがぽっかりと空いてしまった彼は、3月にはイギリスの家に帰り、2月ほど滞在した後イタリアでの生活を経て、フランス滞在中にインタビューを受けた。

「本来、人というのは社会的な生き物だから、社会に出るなと言われるのはとても辛いことなんだ。だが、これまでと違うことをする、チャレンジだと思えることをする良い機会だ。もしかすると長い目で見た時、人間のためになることなのかもしれない。楽なこととは言わないが、この好機を生かせなかったら、さらに悪いことを招き入れる事態になる。これが最後ではなく、別のパンデミックが起こるのかもしれない。気候変動は起きている。実存するいくつもの問題に関して、国単位ではなく、世界コミュニティーとして発信していかねばならないんだ」

コロナ禍や、その中で起きた香港デモ、ブラック・ライヴズ・マター、アメリカ大統領選などにより世界中で対立と分断が加速している。ここに来てようやく「結束(Unity)」が唱えられるようになってはきたが、ジャンルや言語、世代を超えて様々なアーティストとのコラボを行うことによって、ある意味では「多様性」を世に発信し続けてきたスティングは、混迷する世界に対していち早く警鐘を鳴らしていたのかもしれない。

「僕を駆り立てる原動力は好奇心なんだ。ミュージシャンをやっているのも好奇心が旺盛だからだよ。歌を歌うのもだ。このアルバムが、どう受け止められるのかとても興味がある。どんな時も、僕を導くのは好奇心であって、金とかレコードのセールスじゃない。アーティスティックなプロセス、それ自体への好奇心が僕を動かすんだ。なぜならどういう結果が生まれるか、保証は何もないからさ。そこにはリスクもある、それでも何かを発見したい。その感覚が好きなんだよ」

※『デュエッツ』収録曲のストーリーやビジュアルを1992年から現在まで時系列で見ることができる、グローバル特設サイトが公開中。
https://sting.lnk.to/DuetsTimeline




スティング
『デュエッツ』
発売中

日本盤のみSHM-CD仕様 / スティングによる全曲解説・日本語訳付、解説/歌詞・対訳付 / ボーナス・トラック1曲収録
DVD付デラックス盤:3850円(税込)
CD通常盤:2750円(税込)
視聴・購入リンク:https://umj.lnk.to/sting-duetspr
日本公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/sting/

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