LiSAアコースティックライブを考察、むき出しの「歌」とともに10周年へ

音数の少ないアレンジだからこそ、息遣いや繊細なニュアンスまで伝わる

「ASH」という楽曲とMCを通じて、少しだけ気持ちが楽になったLiSAは、続く「紅蓮華」でさらなる圧倒的な存在感を歌で提示。音数の少ないアレンジだからこそ、息遣いや繊細なニュアンスまで伝わるこんな贅沢な瞬間、なかなか経験できないものだ。さらに短いMCを挟み、以降はドラム、ベース、アコースティックギター、ピアノ、パーカッション&女性コーラスという編成をベースにライブが進行。観客のハンドクラップを効果的に取り入れた「BRAND NEW YOU」では、アコースティックギターのストロークとアーシーなアレンジ、LiSAの荒々しい歌声とが相まって独特のグルーヴが生まれる。また、「変わらない青」では無機質なシーケンストラックに乗せて、LiSAがイントロや間奏でグロッケンを叩く場面も。彼女が切々と歌う中、ステージには星を思わせるような照明による幻想的な演出も展開された。


Photo by Viola Kam(V’z Twinkle)

ジャジーなアレンジに生まれ変わった「蜜」からは、再び場の空気が一変。LiSAはグランドピアノの上に横たわりながら、優雅かつセクシーさをにじませた歌を聴かせる。普段のLiSAのライブではオーディエンスの声援や歌声も重要な演出要素となっていたが、今回のこういったアレンジ/演出の場合はむしろ声を出さずにじっくり歌に耳を傾けるほうが最適のように思える。公演中、声を上げることができない昨今の状況が、(結果論でしかないが)今回のライブを最良の方向へと導いたのではないだろうか。さらにこの「蜜」から、アカペラスタートのアレンジが施された「シルシ」へと続く構成は贅沢以外の何ものでもない。この冒頭のアカペラのみで涙腺を刺激されたという視聴者は、きっと筆者だけではなかったはず。力強さと繊細さ、豪快さと儚さが共存するこの名バラードを、完璧すぎるほどエモーショナルな歌で表現するLiSA。久しぶりの“デート(※LiSAはライブをこう称する)”を心の底から楽しんでいることが画面越しにも伝わる。さらにダメ押しで、大ヒット曲「炎」へとつなぐと、ピアノ伴奏に女性コーラスが加わることで、原曲が持つ美しいハーモニーがその場で再現されていく。LiSAはいつも以上に言葉の1つひとつを丁寧に歌うことで、歌詞の持つメッセージを会場中に、そしてモニターの先により強く響かせた。

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