LiSAアコースティックライブを考察、むき出しの「歌」とともに10周年へ

優しさに満ちた美しい新曲「サプライズ」

再び会場に雨音が流れる中、儚げなピアノの音色が響き渡る。ライブタイトルにも用いられたダークなバラード「unlasting」へとつなぐと、それまでの楽曲ともまた異なる重苦しさや悲しみが伝わる歌と演奏で、会場を独特な空気で包み込む。このダークさを打ち破るかのように、最新シングル「dawn」がアコースティック色の強いアレンジで演奏されると、闇に朝日が差し込むかのように会場の雰囲気が軽やかに変化。シンガロングパートでは客席から一斉に拳が上がり、その光景を目にしたLiSAは「完璧!」と笑顔を浮かべる。ブレイクパートではこういう形態のライブでは恐怖すら感じるはずの無音状態をも楽しんでいる様子も伝わり、これもステージと客席との信頼関係の強さが成せるものなのだと強く実感した。

「dawn」で会場の雰囲気が変化したことを受け、LiSAは「幕が開けました!(笑)」と力強く宣言。ライブはここから、さらに明るさを増していく。普段のLiSAのライブを思わせる、多幸感溢れる楽曲で構成された10数分におよぶメドレーコーナーに突入すると、ポップな「KiSS me PARADOX」を筆頭にアップテンポの楽曲が続いていく。「オレンジサイダー」ではLiSAが鍵盤ハーモニカを使う一幕もあり、さまざまな形で観る者を楽しませてくれる。途中、「1/f」や「リングアベル」でペースダウンして優しい歌を届けると、最後は軽やかな「LOVER" S" MiLE」で締め括るというジェットコースターのような構成で、その場にいるすべての人たちを笑顔にさせた。


Photo by Viola Kam(V’z Twinkle)

以降は、クライマックスへと向けてLiSAとバンドメンバーはフルスロットル状態に。「Rally Go Round」ではLiSAが叩くドラムに合わせて、観客がハンドクラップやフットストンプで応える新たなコール&レスポンスが用意され、会場の熱気が一気に高まる。このコール&レスポンスは曲中にもたっぷり採用され、腕を振り上げる観客の熱量がライブ序盤よりも高まっていることも見て取れた。さらに「やくそくのうた」で会場をハッピーな空気で充満させると、ここからさらに前進していこうという思いを込めた、ライブのクライマックスに相応しい「ハウル」で本編を締めくくった。

アンコールでは、白いドレスに着替えたLiSAが「今年2021年4月で私は10周年を迎えます。この10年、いろんな人に出会いながら、いろんな出来事に出会いながら、いろんな出来事に泣かされたり喜んだり、いろんな思いを感じさせてもらいました。それは1つひとつ、その時々にいてくれたみんなが作ってくれたサプライズのような、希望の光のような、そんな1つひとつだったなと思います」と、改めて今の思いを吐露。続けて、「1つひとつここまで作ってくれたみんなに感謝を込めて、そしてサプライズのような希望をみんなに、これからも届けていけるように願いを込めて、新曲歌います」と新曲「サプライズ」を初披露した。優しさに満ちた美しいバラードは、デビュー10周年を目前としたLiSAに、この先もたくさんのうれしいサプライズをもたらしていく1曲になる……彼女の心のこもった歌を聴きながら、そう誰もが思ったはずだ。


Photo by Viola Kam(V’z Twinkle)

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