アジカン後藤×NOT WONK加藤 世代を超えたシンパシーと音楽への向き合い方

後藤正文と加藤修平(Photo by 佐藤祐紀)

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文とNOT WONKの加藤修平。『Lives By The Sea』(Gotch名義)、『dimen』と2021年を象徴するニューアルバムを発表した両者の対談が実現した。聞き手はライターの石井恵梨子。

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Gotchこと後藤正文が録音技術にのめり込み始めたのは今から約6年前のことだ。きっかけのひとつは当時のアルバム『Wonder Future』をフー・ファイターズのスタジオで録ったこと。さらには同時期に登場したアラバマ・シェイクスの『サウンド&カラー』の音にぶっ飛んだこともある。主宰レーベル「only in dreams」に記された年間ベストを振り返れば、2015年のGotchセレクトにはアラバマ・シェイクスの名前あるのだが、同時にランクインしていたのはNOT WONKの『Laughing Nerds & Wallflowers』だった。当時まだハタチ前後だった苫小牧のパンクバンドは、専門技術に特化していくロックの先人を振り向かせるのに十分なエネルギーを放っていたのだ。

両者の共演は2019年末。NOT WONKが苫小牧で行ったワンマンライブ「Your Name」だ。雪の降る地方都市でようやく出会えた二人は、まるで長年の友達だったかのように微笑みを交わし、リスペクトを送り合っていた。そこから1年と少し。NOT WONKの4th『dimen』に再度反応したGotchはSNSで加藤修平(Vo,Gt)とやりとりを交わしている。「落ち着いたら、俺のスタジオに遊びに来て」。かくして、今度は加藤が彼の住む街に赴き、後藤所有の「Cold Brain Studio」を訪れる運びとなった。

最初はもちろんサウンドの話。レディオヘッドの「House of Cards」(『In Rainbow』収録)を題材にしながら、後藤は「これを2008年にもうやってるのがショックだわ」と苦笑し、加藤は「このローを聴かせるための曲って感じがする」と感嘆。選曲はそのうちNOT WONKに替わり、新作、前作、デビュー作へとさかのぼっていく。「若い! 恥ずかしい」と照れる加藤の隣で、Gotchはきっぱりこう返していた。「素晴らしい。俺は全然、悪い音だとは思わない」。



Photo by 佐藤祐紀

後藤から見た加藤とNOT WONK「まだロックバンドって格好いいや」

一Gotchはこの作品(『Laughing Nerds〜』)を聴いた時のこと、覚えてます?

後藤:俺、すっげぇ感動した。これすごいバンドが出てきたと思ったな。

加藤:まじすか? 今聴くと不思議な音ですよね(苦笑)。

後藤:もう出てきたエネルギーだけでめちゃくちゃ輝かしい、みたいな感じだった。ただ、次のアルバム(2nd『This Ordinary』)はちょっと足踏みしてる感じに聴こえたの。もちろん悪い作品じゃないんだけど、このバンドはもっと凄いはずなのになと思ってた。

加藤:あぁ、足踏みっちゃあ足踏みだったかもしれないです。当時は遊びも加えずに「バンドたるや!」みたいな感じで。気張ってたんですよね。

後藤:でも、その次に『Down The Valley』が出て「ほら、やっぱり凄かったじゃん!」みたいな。考えてることと音楽や言葉の歩み、そのバランスがバチッとハマった気がしたかな。NOT WONKここにあり、みたいな。

加藤:あぁ、嬉しいです。



後藤:それで今は新しいアルバム(『dimen』)を聴いて「さらに実験的な作品が来たな」ってワクワクしてるところ。サウンドデザインも面白かったなぁ。参照してるところは古き良きロックなんだろうけど、アウトプットが変だよね。それがいいの。すごくユニーク。着地するところがそこなのか、みたいな。

加藤:個人的にギリギリって感じでしたね。「いい」って言えるかどうかのスレスレ。「これみんな好きだよね?」って感じは自分でもまったくなくて。

一それを加藤くんはあえてやりたかったんですか?

加藤:わかりづらい、突飛なものをやりたかったわけではないですけど。なんとなく普通にやってると自分が盛り上がれなくなっていくし、かといってイロモノみたいなのは嫌だし。だから、イロモノかもしれないものをストレートに捉えられるかどうか、回転はめちゃくちゃだけど球はまっすぐ飛んでる、みたいな感じを目指してましたね。

後藤:一番楽しいもんね、「こんなこと他の誰がやるんだ?」みたいなことやってる時が。こういう作品を聴くと「あぁ、まだロックバンドって格好いいや」って気持ちになる。バンドの立ち方とかも含めて。

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