『エイリアン』から『ホミサイド』まで 記憶に残る名優ヤフェット・コットーを偲ぶ

『ホミサイド/殺人捜査課』ではアル・ジャデーロ警部補を演じたヤフェット・コットー、81歳でこの世を去る。(Photo by Dave Bjerke/NBCU Photo Bank/NBCUniversal/Getty Images)

『007 死ぬのは奴らだ』のドクター・カナンガ/ミスター・ビッグ役、『エイリアン』のデニス・パーカー役、『ミッドナイト・ラン』のFBI捜査官アロンゾ・モーズリー役などで知られる俳優ヤフェット・コットーが3月に81歳で亡くなった。今回は彼のキャリアを振り返ってみよう。

ヤフェット・コットーが画面に登場すると、誰もその存在を無視できなかった。ひとつには彼の大きな体のせい。たいがいの俳優はカメラに映ると大きく見えるものだが、そんな中でも彼は6フィート3インチの長身に、とてつもない巨体だった。そしてあの声。ざらついた、それでいて独特の舌足らずな話し方は、彼が演じる役柄に適度な弱さを添えた。それからあの目。怒りと悔恨、そして登場人物が背負ってきた数々の苦悩に対する憂いが入り混じり、充血したこともしばしばだった。

【画像を見る】『エイリアン』『ミッドナイト・ラン』の登場シーン

3月に81歳で亡くなったコットーは、いろいろな意味で大金星ともいえるキャリアを築いた。ジェームズ・ボンドの敵役を演じ、『エイリアン』や『ミッドナイト・ラン』といった傑作では共演者として存在感を放ち、史上最高の刑事ドラマのひとつ『ホミサイド/殺人捜査課』ではボスを演じた。だが脇役としての際立った特性は、キャリア全盛期に演じた主演の枠には収まりきれず、ゆえに彼は性格俳優のカテゴリーに分類された。また彼は、『帝国の逆襲』のランドー・カルリジアンや、『新スタートレック』のジャン=リュック・ピカード船長などの大役を蹴ったこともあった。

だがどうして、彼は仕事で与えられた1秒1秒を大いに活用した。

コットーが俳優を目指したのは16歳の時。のちに彼は映画評論家ロジャー・イーバート氏にこう語っている。「言葉遣いや話し方を習得しなくちゃいけなくなるだろうとすぐにわかりました。私はハーレム流のいきった話し方でしたから……それでジョン・キャメロン・スウェイジのニュース番組を全部テープに録音して、真似しました」。60年代は舞台やTVで活動し、ついにオリジナルブロードウェイ作品『ボクサー』でジェームズ・アール・ジョーンズが演じたジャック・ジョンソン役の後任に抜擢され、ブレイクする。当時、黒人俳優の活躍の場が限られていることに気付いた彼は、カリフォルニアのハイウェイパトロール職員を描いた1972年の映画『The Limit(原題)』で自ら脚本・製作・監督・主演を手がけた。「今日、ある黒人女性に何て言われたと思います?」 映画のプロモーションでコットーはイーバート氏にこう語った。「黒人男性が黒人女性をデートに誘う映画を見たのは、私の作品が初めてだった、と彼女は言いました。ディナーとか、ロマンチックな音楽とか、そういった諸々です」

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE