北欧ブラックメタル「血塗られた名盤」 メイヘムのメンバーが明かす壮絶な制作秘話

メイヘム(Courtesy of Ecstatic Peace Library © Jørn "Necrobutcher" Stubberud)


映画化にはメンバー全員が否定的

『De Mysteriis Dom Sathanas』がリリースされたのが1994年の春で、このアルバムの影響力の大きさは瞬時に明らかになった。アルバム収録曲はクレイドル・オブ・フィルス、インモータル、エンペラー、ベヒーモスなど、ブラックメタル界きっての雄たちによってカバーされてきたのである。

「あれは画期的だった」と、ベヒーモスのフロントマン、ネルガルが言う。「出たばかりのときは嫌う人が多かった。最大の理由はアッティラの斬新なヴォーカル。もっと伝統的なブラックメタルらしい音を求めていたわけだよ。でも、あのアルバムでのアッティラのヴォーカルは完全に革命的で、今でもそれは変わらない。このジャンルがここまで成長した理由でもあり、俺は強く魅了された。これを聞くと、彼の声が異世界のような効果を生み出している様を、文字通り感じることができる。死人のようで、あっちの世界から聞こえるようなサウンドだよ」

1995年前後、ヘルハマーはネクロブッチャーと再タッグを組み、『Deathcrush』時代のシンガー、マニアックに声をかけ、ブラスフェマーというギタリストと共にメイヘムを再結成することにした。ブラックソーンが引き続き参加してくれることを願ったが、収監されていたために無理となった。1998年、ミラノのフェスティバルでシハーと偶然会い、バンドは『De Mysteriis Dom Sathanas』収録の「From the Dark Past」を一緒にプレイしようと持ちかけた。このとき、シハーは音楽ファンの間でのあのアルバムの影響力の大きさに初めて気付いたと言う。「ファンたちは完全に夢中だったし、イタリア人の友人たちも『De Mysteriis Dom Sathanas』にハマっていた。いつもあれは良いレコードになるとは思っていたけど、あのレコードから影響を受けたというバンドに会うようになって、あのアルバムのパワーと深遠さを初めて自覚したんだ」とシハー。そして、彼は2004年、公式にメイヘム加入を発表した。それ以降、2007年の『Ordo Ad Chao』、2014年の『Esoteric Warfare』(邦題:エソテリック・ウォーフェア~密儀戦乱)をリリースしている。

ところで、メイヘムの伝説が広まった背景には、1998年に出版されたマイケル・モイニハン、ディーデリック・ソーデリンド著『Lords of Chaos』(『ロード・オブ・カオス復刻 ブラック・メタルの血塗られた歴史』)に因るところが大きい。この本は、バンドでの死、ノルウェーのブラックメタル・シーン界に広がった教会放火の波に焦点を当てている。現在、ジョナス・アカーランド監督がこの本の映画化が進めているのだが、彼はかつてはバソリーのメンバーだったことがあり、その後はミュージックビデオ監督としてマドンナ、レディー・ガガなどのMVを撮影してきた。ローリー・カルキンがユーロニモス役で主演することは決まっているが、ヴィーケネス、デッド、ネクロブッチャー、ヘルハマー、ブラックソーンなどの配役は今後決まる予定だ。

ネクロブッチャーは2015年にこの映画を避難する声明文を出し、彼はこの作品を止めるためなら何でもすると公言した。それから2年経過した現在、製作会社から一切の連絡がないとネクロブッチャーが言う。「俺たち、クルー、関係者の知らないところで連絡を取るという姑息なやり方だった。それは間違ったやり方だ。バンドの映画を作るんだろ? じゃあ、最初に連絡するのはバンドのメンバーで、バンドの音楽を使用する許可を得るべきだ。俺たちが監修しないからって、最後に連絡するってのは間違っている」

ブラックソーンも「今となってはあの本がクソだってことはノルウェーのブラックメタル界で有名な話だと思うし、俺たち全員、映画化に関しては懐疑的で否定的だ」と加勢した。

メイヘムの架空の出来事がメタリカの曲「ManUNkind」の最新ビデオに登場した。これを見たシハーは不安を感じ、他界したメタリカのベーシスト、クリフ・バートンをフィーチャーしたビデオをメイヘムが作っているかのような構成に見えると思ったらしい。メタリカに対するリスペクトは失っていないとしながら、シハーは「映画については少し異論がある。だって俺たちバンドの話が元になっている映画だから。それこそ、何だそれ?って感じ」と述べる。

映画化の責任者であるアカーランドにコメントを求めたが、彼は辞退すると言ってきた。



ここ何年間もメイヘムは『De Mysteriis Dom Sathanas』の全曲をライブで演奏したことがあったが、シハーがバンドに戻ってきて、ギタリスト2人のラインナップになった今、初めて完全な形でこのアルバムをライブで再現できると感じている。ネクロブッチャーが素っ気ない声で「バンド活動っていうのは、アルバムをリリースして、それをプロモーションして、ツアーに出る。あのアルバムは唯一ツアーがないままにリリースした作品なんだよ」と言う。

するとヘルハマーが「あのアルバムはプレイしていてすごく気持ちいい」と続け、自分の昔のドラミングを覚え直さなくてはいけなかったと言い、「本当に楽しいね。みんな、あのアルバムを理解して、喜んでくれるから、彼らにとっても意味のある作品になっているわけだ」と喜ぶ。

ブラックソーンも、昨秋、トロンヘイムの大聖堂の近所で行われたギグに3人目のギタリストとして参加したとき、昔プレイしたパートを覚え直さなくてはいけなかった。「あの楽曲を演奏したのが20年以上前で、今の俺のギターの腕前は鈍っているから、一番ストレートな『Freezing Moon』を選ぶしかなかった」と。そんな彼は現在ソーンズの新作を準備中だ。「法衣とアッティラの祭壇のせいでステージは儀式的な空気感で溢れていたけど、それが非常に奏功していた。出番以外は観客に混じってライブを観たけど、俺が観た中で一番のライブだと思う」

シハーが続けた。「ライブのときはいつも死んでしまったあいつらのことを考えている。本当にマジカルな体験で、ステージのエネルギーも雰囲気も大好きだね。それに心のどこかで常に感情を揺さぶられるんだ」と。

【画像を見る】ブラックメタルという過激派の裏側、血まみれの素顔(写真ギャラリー)


From Rolling Stone US.

Translated by Miki Nakayama

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