米ポルノ業界、アジア系女優たちが苦悩する「差別」の実態

左からアダルト女優のサヤ・ソンさん、ジェイド・クッシュさん、ヴィーナス・リュクスさん。クッシュさんは典型的なアジア人の役をまっさきに避けるようにしているという。(Photo by Jonni Darkko/EvilAngel; Courtesy of Jade Kush; Courtesy of Venus Lux)



ポルノ制作会社の無神経な対応

ポルノ業界はこうした議論に敏感に反応してきたとは言えない。6人のアジア人女性が射殺されたアトランタの銃撃事件の直後、ポルノ制作会社のInked Angelsは#StopAsianHateというハッシュタグとともに、「フォローするべきタトゥーをいれたアジア系ポルノスター10人」のリストをツイートした。リストに名前が載せられたサヤ・ソンさんは、会社側がハッシュタグを勝手に利用し、「日が昇る国」など人種に無配慮な表現をリストに使ったとして非難した。するとサイト側は、「支援を示そうとすれば、批判や憎しみを買う」とツイートし、アカウントをすべて削除した(サイト側は問題のリストも削除したが、キャッシュはまだ残っている)。

クッシュさんも、銃撃事件の直後に配給会社がビデオに『アジアンマッサージの襲撃』というタイトルをつけて宣伝し、ツイートに自分がタグづけされたのを知って愕然とした。襲撃事件を受け、アジア系の描き方に関する業界内での議論は悲しいかな、長続きしなかったそうだ。「アジア系俳優が一致団結して、この手のことを話し合っているのは見たことがありません。いろんな意見があるとは思いますが」と本人。「『単なる演技じゃないか、たかが撮影、たかが衣装にすぎない』と言われるかもしれません。だとしたら、違う、こんなの間違ってる、と言う私はおかしいのでしょうか?」

動画サイトでは様々な人種や民族グループが分類され、「アジア系」「エボニー」「ラテン系」といったカテゴリーが成立していることに異を唱えるクリエイターも多い。確かにジョージ・フロイドさんの死に関する配慮を欠いた記事への非難をうけ、業界誌AVNが毎年恒例の授賞式から「エスニック部門」「異人種部門」を排除すると発表したのもつい2020年6月のことだ。

こうしたマーケティングはSEOの見地からすれば納得できるが、結果として俳優たちは、自分のアイデンティティが十把一絡げにされているという気持ちにさせられる。「個人的にはいいとは思わないし、動画サイトで目にする表現も女性蔑視的、人種差別的な傾向にあります。有色人種はこう描かれるべき、ビジネス的にはこうあるべき、という古いやり方に頼りきっているんです。そういうものに頼る必要はないと思いますよ」とペンさんも言う。だがえてしてポルノサイトは社会の嗜好を移す鏡だ。リュクスさんも言うように、業界全体の風潮を変えるには検索ワードを変える以上のことが必要だ。「使うのをやめない限り、そういう表現はなくならないわ」

Translated by Akiko Kato

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