KIRINJI・堀込高樹が語る、新体制への移行と「再会」に隠された物語

思わぬ人物との「再会」

―今回のシングル「再会」ではコロナ禍の状況を歌ってますよね。そもそも本当はバンド活動終了を発表したあと、昨年2月末からツアーを行う予定だったはずで……。

堀込:ライブができなくなって予定が狂いました。

―そこから高樹さんはどう過ごされてたんですか?

堀込:歌詞にも書いたように、常に精神的なリミッターが掛かっているというか、膜に覆われているような感じが続いていました。「抑圧」と言ったら大袈裟ですけど、それまでみたいにワクワクしながら新しい音楽を楽しみ、次の方向性を探っていくような気分にはなれなくて。聴き馴染みのある音楽とか、ジャズやクラシックとか、そういうものに耳が行きがちだったのですが、それを次の作品に反映させるのも違う気がして。



―実際、そういうサウンドにはなっていないですよね。

堀込:『愛をあるだけ〜』と『cherish』でやってきたことが、まだまだ面白そうだと思っているんですよね。自分の作風と現代的なポップスを繋ぎ合わせるような方法論というか。それについては去年からずっと考えていて、もうしばらく『cherish』の先にあるものを作りたかった。

そのつもりで曲を作り始めて、メロディが先にできあがって、自分としては爽やかで素直な曲になった。じゃあ、歌詞はどうしようかなと考えたときに、やっぱり今一番気になっていることを歌おうと思いました。それで、これしかないだろうと。

―コロナ禍で叶いづらくなった、大切な人たちとの「再会」を待ち望む歌詞ですよね。

堀込:友人と偶然会う場面から曲が始まっているじゃないですか(“交差点の向こうに君を見つけて 思わず駆け寄った”)。実は去年の12月、しまおまほさんとバッタリ会ったんですよ。新宿駅の近辺で。

―おお。

堀込:「うわー、久しぶりー!」みたいな。お互いちょっと涙ぐんでしまって。でも、僕はその時、とにかくトイレに行きたかった。

―(笑)。

堀込:「まほちゃん、ごめん! 今いい感じだけど、トイレに行きたくて。年が明けたらご飯でも食べよう。じゃあね!」と言って別れました。そこからまた感染者数が増えたのもあって、それっきりになってしまっているのですが。

―残念ですね。

堀込:でも、それが取っ掛かりになりました。「やあやあ」とバッタリ会うあの感じ、この状況で久しぶりというか、あんまり感じたことのないものだったので。

―かくして感動的な再会のシーンが歌われたあと、サビ終わりの「そんな夢を見た朝」で全部ひっくり返されるという。

堀込:夢オチです(笑)。「こうだったらいいのにな」という理想と、「実際はこうなんだけど」という現実、その両方を描きたかった。どうしようか考えていたときに「そうだ、夢オチだ!」とひらめいて、策を講じてみました(笑)。

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