エンジニア・小森雅仁の貢献―新体制のお披露目として、豪華なゲストを迎えて盛り上げる選択肢もあったと思うんですよね。でも「再会」はその逆で、千ヶ崎さんがベースを弾いている以外は、高樹さんの名前しかクレジットされていない。堀込:今回の曲は、特にゲストを迎えなくてよかった気がします。曲のテーマや歌詞の内容と、一人でコツコツ作っている感じも合っていたので。ここで賑やかしが入ったら「コロナ禍でも楽しくやってるんじゃん!」と思われそうですし(笑)。こういうインナーな感じの、密閉感のあるサウンドでよかったのかなと思います。
―作曲面で参考にしたものは?堀込:ビル・ウィザースの「Lovely Day」。今年の正月にずっと聴いていました。彼の曲はアガるというか、明るい気分になれる。オリジナルはもちろんすごく好きだし、ホセ・ジェイムズが出したカバーアルバム(2018年作『Lean On Me』)もいいです。
―意外にも昔の曲が挙がりましたね。堀込:これまた思い出すきっかけがあって、西友で買い物してたらかかっていたんですよ(笑)。西友はあるときから突然、音楽の趣味が我々好みになったじゃないですか。
―わかります、フリーソウルやネオアコみたいな。堀込:そうそう、プリファブ・スプラウトとか(笑)。それで「Lovely Day」を聴いて、「ビル・ウィザースいいじゃん」となって、家に帰ってから同じ曲を何回も聴くという。そういうのは久々でしたね。「Lovely Day」と「再会」を聴き比べれば、ムードが近いことに気づいてもらえると思います。
―「killer tune kills me」の延長線上とも言えそうですよね。メロウな4つ打ちも含めて。堀込:テンポ感だったり、イントロのふわっとした感じはそうですね。今回はミックスを
小森雅仁さんにお願いしたのですが、それが凄くよかった。最近のヒット曲を誰がミックスしているのか調べたら、小森さんの仕事だらけで(笑)。Official髭男dism、米津玄師さん、藤井 風さん……いい感じの若手の曲をみんな手掛けている。それにラジオから流れてきたときに、押し出しはあるけど耳に痛くはない、とても印象に残るミックスだなと思って、それでお願いしました。
―実際に作業してみて、小森さんはどのあたりが凄かったですか?堀込:僕のなかでは
「時間がない」みたいな、ナチュラルだけど華やかな仕上がりを想定していたのですが、小森さんのミックスは全然違いました。もっとダンス・ミュージック寄りのミックスで、ボーカルの処理もこんなにパリッとさせたことはなかったので、「ここまで行くんだ!」と驚きました。
小森さんはKIRINJIを聴いてくれていて、なおかつ彼自身の打ち出しもはっきりしているので、今回は僕のイメージに近づけるのではなく、彼のジャッジに従うことにしました。普通にミックスしたらシティポップ的な文脈で捉えられそうな曲だと思いますが、小森さんがミックスすることによって、より間口が広がった感じがします。