地下室の人食い殺人鬼、出会い系アプリに潜む恐怖

マッチングアプリに依存していた理由

鬱の対処としてよく取っていた方法がインターネット上でパートナーを探すことだった。「ケヴィンは常に愛に飢えていましたが、男性とか、そういう人に普段受け入れてもらえたと感じることはありませんでした。だからTinderとかのマッチングアプリにあんなに依存していたんだと思います」と長年の友人のヴァネッサ・ウッドリーさんは言う。

しかし、ベーコンさんの持った関係は精神をより追い詰めるばかりだった。付き合った男たちの多くに心理的虐待を受けていたと友人たちは言う。マイヤーズさんによると、ベーコンさんは浮気したと激しく迫って来たり、体だけが目当てで近づいて来るような男を惹きつけ、どうにか更生させようという“プロジェクト”をよく行っていた。

このような破綻した関係が彼をさらに鬱の深みへ突き落としていったと友人のキンバリー・グエンさんは言う。2019年にミシガン大学フリント校のジェンダー・セクシュアリティー・センターで共に活動していたが、後にシカゴに移り住んだ。「色々な問題を抱え込み過ぎて自分を見失っていました」

ベーコンさんがシカゴにいるグエンさんを訪ねると、2人はゲイの人たちが集まる街ボーイズ・タウンで遊び、いつか自分もここに住むと誓った。しかしスワーツ・クリークに戻るとまた財政難に陥り、鬱が悪化し、インターネットで愛して治せる男を探す生活に戻ってしまった。

彼が一番のどん底にいたのは付き合っていた人と別れた2019年後半だったとウッドリーさんは言う。車で精神科に連れて行ったことがその秋2度もあった。「あんな状態の友達を見るのはつらいです。(別れたことが)本当につらくて……彼はとにかくあの感情から逃れたかったんです」

あまりに残酷だったからか、はたまた有名人と同姓同名だったからか、事件はワシントン・ポスト紙やデイリー・ビースト、イギリスのデイリー・メールなどにも取り上げられ、世界的に注目を集めた。そして、この惨劇の予兆があったと地方紙が報じるまでそう時間はかからなかった。ラタンスキーの被害に遭ったのはベーコンさんが3人目だった。(ラタンスキーの弁護人はこれについての複数回の取材依頼に応じなかった)

2019年10月10日、ジェームズ・カールセンさん(48歳)は誘拐され地下室で目覚めたと警察に通報。怒りに満ちた声で電話に話す。「ある男に会った。自分はバイセクシャルで、カワイイ男が口説いて来るから車の方で話した。店に行ってソーダを飲んだ。気がついたら地下室にいた」

手首を繋いでいた革のベルトを肉切り包丁で切り、そのまま包丁を片手に誘拐犯の車で州間高速道路69号線と平行に3マイル(約5キロ)走るタイレル通りを逃げて来たとオペレーターに伝えた。

「こんなことは初めてだ。薬を盛られたのかはわからない。地下室に閉じ込められてたことしか知らない。わかったか? 地下室で縛られてたんだ」と話した10分後に駆けつけた州警察に保護された。男は知り合いではないと言うカールセンさんは起訴しなかった。

ところが2020年6月、カールセンさんが連邦裁判所へラタンスキーを起訴すると事件の全容が明らかになった。カールセンさんはラタンスキーとセックスをするためニューヨークからミシガンへバスで移動したが、到着したと思ったら「ラタンスキーに縛られ地下室に監禁された」と起訴状にある。

Translated by Mika Uchibori

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