歴代最高のメタルアルバム100選

40位 - 36位

40
メイヘム
『De Mysteriis Dom Sathanas』 1994年

疎外感とニヒリズムに満ちた作品

ノルウェーのブラックメタル界の重鎮メイヘムがデビューアルバム『De Mysteriis Dom Sathanas』を完成させるまでの道のりは、呪われているとしか思えないほど苦難に満ちていた。ヴォーカルのデッドは、レコーディング前に自ら命を絶った。さらにベーシストのカウント・グリシュナックはギタリストのユーロニモスを殺害し、殺人の罪で収監されてしまう。ホラーストーリーそのものの背景ばかりが注目されがちだが、オーシェトの切り裂くようなギター、セッションヴォーカリストのアッティラ・シハーの奇声とデッドのゴシックで恐ろしい世界観を反映した歌詞、ヘルハンマーによる地響きのようなドラムがせめぎ合う本作が、身も凍るような疎外感とニヒリズムに満ちた唯一無二の作品であることは確かだ。S.S.



39
パンテラ
『Far Beyond Driven』 1994年

ポピュラー音楽史上最も過激な首位作

パンテラのベーシストであるレックス・ブラウンは、本作について本誌にこう語っている。「レコード会社からは(チャートの頂点に立った)メタリカの『Metallica』みたいなのを求められてた」。パンテラは当然のごとくその要望を無視し、バンド史上最も速く(冒頭曲「Strength Beyond Strength」)、最もヘヴィで(サバスを思わせる「I’m Broken」)、最も厭世的な(堕落した「Good Friends And A Bottle Of Pills」)楽曲を収録したレコードを完成させた。Billboard 200で初登場第1位を記録した本作は、ポピュラー音楽史上最も過激なNo.1アルバムとして人々に記憶されている。同作の破格の成功を支えていたのが、90年代中期のパンテラの圧倒的存在感、「一切妥協しない本物のヘヴィメタルのレコードを作る」というメンバーたちの決意だったことは疑いない。R.B.



38
アイアン・メイデン
『Powerslave』 1984年

確固たる評価を得ていた5人の傑作

アイアン・メイデンが1984年に『Powerslave』を発表した時点で、ブリティッシュ・メタルの代表格であるバンドは既に4枚の傑作アルバムを発表していた。ライブバンドとしても確固たる評価を得ていた彼らは、次のワールドツアー中にライブアルバムを制作することも決めていた。「(前作の)『Piece Of Mind』の最も優れていた部分に、(1982年発表の)『The Number Of The Beast』の攻撃性を加えた」。本作に関してブルース・ディッキンソンはそう語っている。「素晴らしいレコードだと自負してるよ。売れるっていう意味じゃなくてね」。アルバムの最後を飾る13分に及ぶクラシック「Rime Of The Ancient Mariner」、そしてディッキンソンが古代エジプトの王になりきり、どんなに偉大な人物にもやがて死が訪れるという真実に抗おうとするタイトル曲も秀逸だ。T.B.



37
ブラック・サバス
『Heaven And Hell』 1980年

ディオがバンドに新たな命を吹き込む

ブラック・サバスの最初の10年間では、オジー・オズボーンのいないバンドなど想像することもできなかったが、1979年の時点で彼の無責任さとドラッグ依存は目に余るようになっており、我慢の限界に達したメンバーたちは彼を解雇する。オジーの後任を務められる地球上で唯一の存在、それがメタル界屈指のヴォーカリストにして、元レインボーのシンガーだったロニー・ジェイムス・ディオだった。ディオは存在感が薄れつつあった70年代後半のサバスに新たな命を吹き込み、威厳に満ちた「Heaven And Hell」、ドラマチックな「Die Young」等の名曲を生み出した。ディオがリリシストだったことで、歌詞担当だったベーシストのギーザー・バトラーはプレッシャーから解放され、バンドはかつてない貫禄を醸し出すようになる。A.G.



36
ヴァン・ヘイレン
『Women And Children First』 1980年

過去作よりも格段にヘヴィなレコード

「音楽性は進化したけど、それは成熟したっていう意味じゃない」。デイヴィッド・リー・ロスは本作のインタビューでそう語っている。ライトなアコースティック曲もいくつか見られるものの、トライバルなドラミングとギターノイズが印象的な「Everybody Wants Some!!」、ベースがリードする「Fools」、インタールードの「Tora! Tora!」、ギターテクが光る「Romeo Delight」と「Loss of Control」、そして他の追随を許さないエディの表現力が存分に発揮された「Take Your Whiskey Home」等を収録した『Women and Children First』は、過去作よりも格段にヘヴィなレコードだった。よりダークになる次作『Fair Warning』では影を潜めるものの、ロスは本作の全編で奇声を発し、嘲笑し、大声を張り上げ、スキャットを披露し、金切り声で叫び、ロック史上屈指のひょうきん者の本領を発揮している。K.G.



Translated by Masaaki Yoshida

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