歴代最高のメタルアルバム100選

5位 - 2位

5
ブラック・サバス
『Black Sabbath』
1970年

ヘヴィメタルの
始祖の誕生

1970年、現在ヘヴィメタルとして知られる音楽の始祖であるブラック・サバスのデビューアルバムが産み落とされた。ギタリストのトニー・アイオミによる長尺でゴージャスなソロが登場する最終曲「Warning」には、バンドのルーツであるブルースの影響が色濃く現れている。アメリカ盤にのみ収録されたジャジーな「Wicked World」では、オズボーンが人々を戦場に送る政治家や死に至る病について歌い上げる。そういったトピックは今でこそロックにおけるクリシェだが、その冷徹なほどに率直な視点は当時の世に衝撃を与えた。「レコード会社の人間を前に演奏するショーケースライブをよくやってたよ、3曲目ぐらいになると誰もいなくなってたけどな」。デビュー前の日々について、ベーシストのギーザー・バトラーはそう語っている。「あるプロデューサーから、楽器の弾き方と曲の書き方について学んでから出直してこいって言われた時のことは永遠に忘れない」K.G.



4
アイアン・メイデン
『The Number
Of The Beast』
1982年

5週間で生まれた
メタルの金字塔

ポール・ディアノの後任として、オペラを思わせる歌唱法とカリスマ性を誇るブルース・ディッキンソンが加入し、バンドが更なるブレイクを果たすための条件は整っていた。だが唯一の問題は、彼らが既存の楽曲に飽きてしまっていたことだった。「気に入ったアイデアは使い果たしてしまっていた」。ディッキンソンはそう語っている。「俺にとっては歓迎すべきことだった。ポールやスティーヴ(・ハリス、ベーシスト兼メインソングライター)が考えた歌詞を歌わなくてよかったからね。だから俺たちは、どういう曲を書くかを考えるところから始めた」。ハリスとメンバーたちは難題を見事にクリアし、緻密に構成された楽曲と、新ヴォーカリストの圧倒的レンジに見合ったハイテンションな歌詞を生み出した。レコーディングからミキシングまでをわずか5週間で終えた本作は、メタル史に名を残す金字塔となった。スピード感溢れるシングル曲「Run To The Hills」は各国でヒットを記録した。S.S.



3
ジューダス・プリースト
『British Steel』
1980年

メタルにメロディを
持ち込んだ革新性

70年代のブリティッシュ・メタルは強度とヘヴィさに重点を置いていたが、ジューダス・プリーストはそのメタファーをレーザーのような鋭いものに変えようとしていた。「初期の俺たちのレコードはすごく手が込んでて、自己満足的なリードブレイクなんかも入ってた」。ギタリストのグレン・ティプトンはMusician誌にそう語っている。「でも俺たちは、より簡潔でテンポの速い曲を書き始めた。そして何より、ヘヴィメタルの世界でタブーとされていたメロディを持ち込んだ」。激しく歪んだギターと、ロブ・ハルフォードの攻撃的なヴォーカルこそメタルそのものだが、パワーコードで突っ切る「Living After Midnight」から、フットボールファンのチャントで締めくくられる「United」まで、本作の直線的で旋律に満ちたソングライティングはポップとさえ言える。だがアルバムの真のハイライトは、ファンキーそのもののドラムとベースのグルーヴを燃料として暴れまわるロボットのような「Metal Gods」だろう。J.D.C.



2
メタリカ
『Master Of Puppets』
1986年

一瞬の隙もない
正真正銘の傑作

不吉なウェスタン調のアコースティックギターがスパニッシュ調のメロディを奏でる「Battery」のイントロは、以降約1時間にわたって繰り広げられるスピード感と攻撃性に満ち、無慈悲で好戦的なリフの嵐の前触れにすぎない。『Kill ’Em All』の発表からわずか3年で、メタリカはスラッシュメタルの完成形を提示してみせた。長尺で多様な楽曲群。BPMが190に達する「Battery」、半狂乱のようなペースで刻まれる断続的リズムに圧倒される最終曲「Damage, Inc.」、マーチングバンド的リズムとキャッチーなリフに合わせてヘットフィールドがとシャウトする、スラッシュメタルの教科書のような「Disposable Heroes」も非の打ち所がない。『Master Of Puppets』はバンドの真骨頂であり、メタリカという存在を確立したアルバムだ。「あのレコードを聴くと『マジかよ、よくこんなの作ったな』って自分でも思うんだよ」ラーズ・ウルリッヒは2016年に笑いながらそう語っている。「とんでもないパワーに満ちたアルバムさ」K.G.



Translated by Masaaki Yoshida

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