歴代最高のメタルアルバム100選

65位 - 61位

65
フェイス・ノー・モア
『Angel Dust』 1992年

予定調和を拒否して完成させた4th

予定調和を拒否するフェイス・ノー・モアが完成させた4作目は、揺るぎない反骨精神を備えたレコードだった。マイク・パットンは当時こう語っている。「このアルバムを買った人たちが『何だこりゃ?』って反応したとすれば、俺たちとしては満足さ」。サイモン&ガーファンクルの曲からパーカッションをサンプリングした「Midlife Crisis」では躍動するリズムを轟かせ、ファンク・ロックなリフとチアリーダーのチャントを用いたコーラスが印象的な「Be Aggressive」では男性どうしのフェラチオについて歌う。本作はデフトーンズやシステム・オブ・ア・ダウンからスリップノットまで、奇形のメタルを追求するあらゆるバンドに影響を与えた。R.B.



64
ゴッドフレッシュ
『Streetcleaner』 1989年

80年代後半のメタルシーンに衝撃

耳障りなサンプリング音とドラムマシンを駆使するゴッドフレッシュは、ギターとドラム以外の楽器が軽視されがちだったメタルの傾向に終止符を打ち、急速な進化を遂げていた80年代後半のメタルシーンに衝撃を与えた。ディストーションギターを除けば伝統的なメタルの要素はほとんど見られないが、彼らが20年前に同郷バーミンガムで生まれたブラック・サバスと同じフラストレーションを根底に宿していることは明らかだ。ゴッドフレッシュとしての作風を極限まで突き詰めると、ジャスティン・ブロードリックはニューロシスやサン O)))にその道を譲り、自身はポストメタルを標榜するイェスーを始動。よりソフトなアプローチを追求し続けている。I.C.



63
ソドム
『Agent Orange』 1989年

変わらぬスラッシュへの没頭

メタリカが「Blackened」でプログレ路線を追求し、スレイヤーが『South Of Heaven』で異形のドゥームメタルを鳴らしていた頃、ソドムは1983年頃と変わらずスラッシュに没頭しており、むしろ更にのめり込んでいるようにさえ映った。ストレートで緊迫感漂う本作には明らかにアメリカのバンドとは異なるダークさと危うさがあるが、それはトム・エンジェルリッパーのクセのあるアクセントと文法の怪しい英語詞、そしてフランク・ブラックファイアの鬼気迫るギタープレイによるところが大きい。ドイツのスラッシュ勢ではクリエイターやデストラクションが80年代に放った秀作も捨てがたいが、大胆極まりない本作が群を抜いていたのは間違いない。K.G.



62
スリープ
『Jerusalem』 1999年

伝説的な3人組によるマイルストーン

ストーナーロックの金字塔『Holy Mountain』を1992年に発表したベイエリアの3人組、スリープはその7年後に延々とマリファナを讃え続ける全1曲1時間の本作を発表した。コンセプトはシンプルそのものだが、その制作過程はサウンド以上に過酷なものだったという。マット・パイク(Gt)によると、バンドは同曲の制作に約4年を費やし、その過程で曲は当初のイメージよりもスローでトリッピー、そして遥かに複雑なものに変化していったという。「テイクを録ってはボツにするのを繰り返した」という制作に伴う苦行をきっかけにバンドは活動休止してしまうが(2009年に再結成)、本作は伝説的バンドによるマイルストーンとして歴史に刻まれている。D.E.

61
コンヴァージ
『Jane Doe』 2001年

希望と絶望を探し求める中で生まれた

凄まじいテンションで感情を爆発させるハードコアの重鎮コンヴァージは、パワーには事欠かなかったヘヴィメタルに痛ましさを持ち込んだ。予測不可能でエレガント、そしてプログレッシブでさえある本作は、スレイヤーの正確さとブラック・フラッグのエネルギーを兼ね備え、当時浸透しつつあった現実逃避としてのブラックメタルの対極にあった。冷酷な罠に囚われた小動物のように声を絞り出すジェイコブ・バノンは、脆さと苦悩を曝け出すアティテュードで圧倒的なカリスマ性を確立。カート・バロー(Gt)による肉厚で装飾のないプロダクションは、アイシスやハイ・オン・ファイア、ネイルズ、ダーケスト・アワーなど後続に大きな影響を与えた。I.C.



Translated by Masaaki Yoshida

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