Smerzとermhoiが語る、ジャンル横断が当たり前になった時代のクリエイティブ論

左からスメーツ、ermhoi

『WIRED』日本版前編集長の若林恵が主宰するコンテンツレーベル、黒鳥社による「blkswn jukebox」。その編集委員である若林と小熊俊哉が、音楽シーンのキーマンに話を訊くトーク配信企画「Behind the Scene」。前回の榎本幹朗に続いて、第3回はノルウェー出身のデュオ、スメーツ(Smerz)と特別ゲストのermhoiを迎えて、「北欧電子音楽シーンの最先端に学ぶ、新時代のDIYクリエイティブ」をテーマに語り合った。

「ビョークのポップと狂気を引き継ぐ大器」と謳われるスメーツは、今年2月にデビューアルバム『Believer』を名門XL Recordingsからリリース。ダークでミステリアスな音世界が高く評価された。二人ともプロデューサーとシンガーを兼任し、DIYでトラックを制作。自国のルーツやカルチャーと向き合い、ハイブリッドに融合させることで新しい可能性を生み出している。かたやermhoiは、常田大希率いるmillennium parade、小林うてなやJulia Shortreedと結成したBlack Boboiでも活躍しつつ、ソロとしても2ndアルバムを制作中。かねてからスメーツのファンだったという。

本稿では、その「Behind the Scene #3」のダイジェストをお届けしよう。全編は、ぜひYouTubeのアーカイヴでご覧いただければと思う。

【動画を見る】「Behind the Scene #3」YouTubeアーカイヴ映像



スメーツ(Smerz)
カタリーナ・ストルテンベルグとアンリエット・モッツフェルトによるノルウェーのデュオ。共にノルウェーの首都オスロで幼少期を過ごたのち、デンマーク・コペンハーゲンの音楽学校在学中に意気投合。2017年にXL Recordingsと契約し、翌年に1st EP『Have Fun』をリリース。2021年2月にデビュー・アルバム『Believer』をリリース。


ermhoi
日本とアイルランド双方にルーツを持ち、独自のセンスで様々な世界を表現するトラックメーカー/シンガー。2015年に1stアルバム『Junior Refugee』をSalvaged Tapes Recordsよりリリース。以降、イラストレーターやファッションブランド、演劇、映像作品やTVCMへの楽曲提供、ボーカルやコーラスとしてのサポートなど、ジャンルやスタイルに縛られない、幅広い活動を続けている。2018年に小林うてな、ジュリア・ショートリードと共にBlack Boboiを結成。2019年よりmillennium paradeに参加。Answer to Remember、東京塩麹など同世代で注目を浴びているバンドにも参加している。現在はニューアルバム制作中。


音楽を定義することに意味はない?

若林:今日は、スメーツのアンリエット・モッツフェルトさんと、カタリーナ・ストルテンベルグさんをゲストにお招きしました。

アンリエット:サンキュー、アリガトウ。

カタリーナ:今、オスロのホームスタジオからジョインしてます。

若林:一緒に住んでいらっしゃるんですか?

アンリエット:今は違いますが、以前は2年ほど一緒に住んでいました。

若林:今回のアルバムは、そこで作られたんでしょうか?

カタリーナ:最後の仕上げなど、一部はここで作りましたね。


左からカタリーナ・ストルテンベルグ(Catharina Stoltenberg)、アンリエット・モッツフェルト(Henriette Motzfeldt)

小熊:ちなみに「Smerz」って、どういう意味なんですか?

カタリーナ:元々はドイツ語で「ハートブレイク」や「傷心」を意味する「herzschmerz」という言葉で、その一部を取っています。傷心に関係した曲が多いので、合うかなと思って。

若林:お2人は、どういう経緯で一緒に音楽をやるようになったのでしょう?

カタリーナ:2人ともオスロの高校に通っていて、卒業後にデンマークのコペンハーゲンに引っ越してからより仲良くなり、一緒に音楽を作るようになりました。

若林:前作のEP『Have Fun』(2018年)と『Believer』には共通点もありますが、ぜんぜん違うものである印象も受けました。ご自身のスタイルは、まだ探し続けているんでしょうか?

カタリーナ:今の時代、「こういう音楽です」と言葉で説明したり定義したりすることには意味がないのかなと思うんです。自分たちでも、自分たちの音楽は言葉で形容しがたくて。なので、興味のあるものを使って自分たちの表現をすると、様々な「ジャンル」と呼ばれるものに跨った表現になるかもしれません。


『Have Fun』収録曲「Because」

小熊:ermhoiさんは以前からスメーツの音楽を聴かれていたそうですね。2人の音楽について、どんな印象を抱いていますか?

ermhoi:(『Have Fun』の頃は)すごくダンサブルなのに、使っている音が実験的だと思って。こだわりが重層的に感じられる音作りなので、めちゃめちゃぶっ刺さりました(笑)。今回の『Believer』には、クラシックや民謡(フォークロア)的な要素が取り入れられていたことにびっくりして。私も現在、クラシックのような既存の古典的な音楽をポップミュージックに取り入れようと思ってニューアルバムの制作をしているので、重なる部分も多いんです。お2人にお訊きしたいのですが、(出身地の)ノルウェーと(二人の出会った音楽学校のある)デンマーク、それぞれの土地性からの影響は音楽に表れますか?

アンリエット:自分にとって、オスロとコペンハーゲンは音楽空間としてまったく違いますね。コペンハーゲンではシーンのようなところに仲間がいて、仲間たちの間には「こうやって音楽を作る」という暗黙の了解があり、フィードバックをもらいながら音楽を作っていました。オスロの人々は、私たちの音楽をぜんぜん違う視点から見ていると感じます。よりアカデミックというか、ビジュアル的な美学を踏まえて音楽を見ているところがあるんです。

小熊:コペンハーゲンにおける「暗黙の了解」とは、どんなものですか?

カタリーナ:自分たちがいたのはクラブシーンなので、テクノから発展した音楽をプロデューサーたちが作っている環境でした。さらにR&Bやロック、実験的なクラシック、ギターミュージックから刺激をもらって、それらが自分たちの音楽の構成要素になっていたんです。

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