Smerzとermhoiが語る、ジャンル横断が当たり前になった時代のクリエイティブ論

「影響」について語ることの意味

若林:コロナ禍において、音楽家の役割は改めて問い直されたと思うんです。「なぜ社会に音楽家がいるんだろう?」ということについて、思うことがあれば教えてください。

カタリーナ:音楽って、人と人とを繋げる力があると思うんです。生活に喜びをもたらしてくれるものだと思います。たしかに、コロナ禍において音楽は、ひょっとしたら贅沢品だと思われるかもしれない。だけど、音楽のない世界に私は行きたくないですね。やっぱり、生活に欠かせないものだと思います。

ermhoi:私もまったく同じ気持ちです。音楽は、複数人でいる時も一人でいる時も、心地よい時も居心地の悪い時も、いつでも場所を提供してくれるし、空気を良くしてくれる浄化作用のようなものを持っていると思います。しかも、寄り添う音楽、鼓舞する音楽、癒しを与えられる音楽と、すごく多様で、どれも意味がある。他のメディアでは難しい、音楽だからこそできることがある。もちろんパンデミック以降、音楽家として歯痒さを感じていますが、音楽は間接的にでも人を助ける力を持っているものだと信じています。



若林:コメント欄にスメーツへの質問がきています。「ジョン・カーペンターやアンジェロ・バダラメンティ、バーナード・ハーマンなど、映画音楽からの影響を感じます」。これについては、いかがですか?

カタリーナ:直接的にはないですね。ジェームズ・ボンドの音楽にハマっていたことはありますが。『ピンクパンサー』について話したり。

アンリエット:あと、アクション映画とか。スパイ映画の音楽について話したこともあったかな。

若林:「何から影響を受けました?」というのは、ジャーナリストにとってクリシェの質問なのですが、スメーツは影響とアウトプットの関係が独特だと感じます。「影響」というものについて、どんな考えをお持ちですか?

アンリエット:難しいですね。「影響」について語ることは結局、物事を区別して、既存の枠組みに当てはめてしまう感じがします。もちろんインプットがあってアウトプットをするわけですが、その過程で、個人の中にある色々なものと共に昇華されるわけですから。ピンポイントに「(影響を受けたものは)これ」と絞るのは難しいですね。

カタリーナ:自分の中にあるすべてのものが結果に結びついていて、直近に触れたものが明確に出てくることもあります。たとえば、今回のアルバムにはオペラっぽい曲がありますが、それは制作をしていた時期に、たまたまそういう音楽にアクセスしていたので、それが自然と反映されました。また、「影響」に自覚的になりながら音楽をやることに対して、「どうなのかな」と感じることもあります。音楽や本、映画など、自分たちが触れてきたものは、なんらかの形で作品に反映されるのではないでしょうか。

小熊:最後に、『Believer』がどんなアルバムかを改めて視聴者に紹介してもらえますか?

カタリーナ:お訊きになりたい情報はすべてアルバムに詰まっていますので、ぜひ聴いてみてください。そこにすべての答えがあります。

小熊:今日はありがとうございました。

アンリエット&カタリーナ:サンキュー!

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE