Tempalayが語る、進化するビジョン「人類よ、いざ化けろ」

Tempalay:左からAAAMYYY(Cho, Syn)、 John Natsuki(Dr)、小原綾斗(Vo, Gt)(Photo by Genki Ito for Rolling Stone Japan)

2020年12月にシングル「EDEN」でメジャーデビューを果たした3人組バンドTempalay。2014年に結成された彼らによる4枚目のフルアルバム『ゴーストアルバム』では、ポップとアヴァンギャルドの間を行き来しながらサイケデリアやオリエンタリズムを大々的に導入。他の追従を一切許さぬその唯一無二のサウンドスケープによって、日本の音楽シーンに揺さぶりをかけてきた。

作品ごとに大きな進化を遂げている彼らに兼ねてから注目していた本誌では今回、1万字のバンドインタビューをお届けする。

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.14」に掲載されたものです。

瞬間的な怒りもあった。でも、「歌詞はユーモア」

ー今作『ゴーストアルバム』はいつ頃から作り始めたのですか?

小原 最初は昨年4月くらいにリリースする予定だったものが、コロナの影響で延期となって今のタイミングになったんですよ。なので、制作に取りかかったのは3月くらい。そこからしばらく空いて、11月にまた再開したという感じです。

Natsuki 「GHOST WORLD」や「ああ迷路」、「忍者ハッタリくん」、「EDEN」あたりは前半に録った曲で。

小原 次にリード曲「シンゴ」を作り、最後に録ったのが「ゲゲゲ」でした。





ーじゃあ、昨年2月にリリースされた「大東京万博」以外は、コロナになってから作り始めたと。

小原 そうですね、緊急事態宣言が出た後だと思います。

Natsuki コロナになったのは、「大東京万博」が出てすぐでしたね。一度だけライブをやって、そのときすでにお客さんは全員マスクをしていて。これからツアーが始まるというときにコロナになってしまいました。



ースケジュールもぽっかり空いてしまったと。その間、どんなことを考えていました?

小原 特に何も考えてないですね(笑)。普通に楽しく過ごしていました。その前からちょっと精神的に煮詰まっていたので、ちょうどよかったのかなという気もする。個人的には。

ーそうですか。

小原 もちろん、最初のうちは「瞬間的な怒り」みたいなものはありましたけどね。ここまで(コロナと)長い付き合いになるとは思っていなかったし。その沸々とした気持ちはプリプロの段階でもありました。ライブもなくなるし、それに対する補償もないし「なんで、こっちだけ損してんねん」という情勢に対する怒り。ただ、それをそのまま歌っても仕方ないと思うんですよ。その怒りを歌詞にして伝えたいっていうのはないし、それがTempalayでやりたいことではないので。

ー瞬間的な怒りが曲作りのモチベーションにはなっても、最終的なアウトプットではないと。

小原 基本的に歌詞なんてものは、ユーモアだと思っていますしね。どうでもいいというか、言葉遊びなんです。歌詞ってみんな「文章」としては拾ってないと思うんですよ。曲の中で飛び交っているワードをキャッチしているような感覚というか、それで各々が自由に解釈するところに少なくとも価値があると思っているので、そもそも最初から肯定したり否定したりしてしまうと響かないんじゃないかなと。もちろん、肯定的な歌詞に救われる人もいるとは思いますけど。僕は自分の考えを、たとえ肯定的であっても押し付けたくないんでしょうね。

ーNatsukiさんとAAAMYYYさんは、ステイホーム期間はどんなふうに過ごしていました?

Natsuki 予定が空いたことで、今まで忙しくてできなかったことに取り組んでいました。ドラムの練習をしたり、ソロで作っている曲を自分でミックスしてみたり。機材のこともいろいろ調べましたね。1日のスケジュールを自分で組むようにして、コロナになる前よりもしっかりした生活が送れるようになったかもしれないです(笑)。

AAAMYYY 私は、最初の方はかなりダウナーになってしまいました。スケジュールがパンパンに詰まっていたのが、いきなりゼロに近い状況になって、「自分は今まで何のためにやってきたのだろう?」とか考え始めてしまったんです。抜け殻みたいな日々が、結構最近まで続きました。でも、猫を飼い出したり、「自分を大事にしよう」というふうに考え方をシフトさせたりしたことで、結果的にはいい1年になったと思います。

ーネット上で意見の対立や分断が進み、世界を見渡しても香港デモやBlack Lives Matter、大統領選などいろいろなことが起きていましたが、そういうのを見て感じるところはありました?

小原 うーん、違和感を覚えつつも個人的にはノータッチというか。「いろんな考え方があるよな」と思って静観していましたね。あまり自分ごととは思えなくて。

Natsuki 俺はシンプルに、SNSとは距離を置こうと思いました。そもそもそんなにやりたくてやっていたわけじゃなくて、宣伝のために「やった方がいいんだろうな」くらいの気持ちだったんですけど、別にそこを頑張る必要はないかなと。今まで外側に発信することへの意識が向きすぎていた気もするし、もっとベーシックに立ち返って自分が納得するものを作りたいと思えるようになった。生き方もそう。自分が納得のできる生き方をしたいと思ったときに、SNSを覗くのは極力最小限でいいのかなと。

AAAMYYY 私は、最初の頃は世の中の情勢に対して積極的に発信していました。そうして生きるのが普通のことだと思っていたからなのですが、「果たして自分のスタンスは合ってたのかな?」とか「何もかも間違っているんじゃないか?」みたいになって、どんどん疲弊していってしまったんです。考えるのは人の自由だなと思ったので、しばらく私もSNSから離れていましたね。

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