カート・コバーン「生前最後の写真」がオークションへ

写真家のジェシー・フローマンが捉えたカート・コバーン(© Jesse Frohman)

いまは亡きニルヴァーナのフロントマンの姿をとらえたアイコニックな写真が米現地時間5月3日からオークションに出品される。

ヒョウ柄プリントのジャケット、ボーイッシュなトラッパーハット、そして白いフレームのJackie Oサングラス——目を閉じれば、はっきりと思い浮かべることができる。これらのアイテムはすべてカート・コバーンのものであることは確かだが、当の本人は角度によって少し違う表情を見せている。ひょっとしたらそれは、被写体である彼が炎のような性格の持ち主だったからかもしれない。無秩序に揺らめいたり、消えまいと必死に戦っていないときに限り、それは明るく鮮やかに燃え上がった。

まもなくニルヴァーナの熱狂的なファンは、バンドのフロントマンがこの世を去る前に行われた最後の公式写真撮影の親密な瞬間を間近で見ることができる。撮影は、コバーンの死のわずか数カ月前、1994年の春に行われた。

米現地時間4月28日、写真家のジェシー・フローマンがオークションサイトを立ち上げた。フローマンのサイトでは、彼が「The Last Session」と呼ぶ、コバーンとの最後の写真撮影でカメラに収められた100点以上の写真がNFT(非代替性トークン)で売りに出される。コンタクトシートやネガフィルムのなかには、いままで一度もスキャンされなかったものも複数含まれるため、今回発表される写真の一部は未公開のものだとフローマンは本誌に語った。4月28日正午(米東部標準時)時点では、誰もがサイトからサムネイル画像を閲覧できるが、高画質バージョンを手に入れられるのは落札者のみだ。

オークションは5月3日正午(米東部標準時)にスタートし、7日午後6時に終了する。一点物の作品の開始価格は、コバーンが27歳で他界したことを踏まえて27.27 ETH(イーサリアム)に設定されている。本記事掲載時点では、この額は7万2000ドル(約780万円)に相当する。

「こっちでは1枚の写真を、あっちはでまた別の写真を、ここではスリーショットなんかをといった具合に誰もがやっていましたから、いままで誰もやっていないようなことがしたかったんです」と、104点の写真をひとつのNFT商品としてまとめ上げたことについてフローマンは述べた。「これは二度とできない特別なものです」。フローマンは、コバーンとの最後の写真撮影を歴史的な瞬間だったととらえ、しかるべき評価を受けるのは当然だと考える。絶えず変化するコバーンのエネルギーにより、一度にすべての写真を観るのは一本の映画を観るようなものだと言う。「まるで映画研究ですよ」とフローマンは話した。

>>関連記事:カート・コバーンのギター、約6億4000万円の史上最高額で落札される

これらの未公開写真を手に入れる唯一の方法は、「The Last Session」と命名された完全版のNFTを購入することだ。だが、ほかにもより手頃なオプションが用意されている。「Nevermind Editions」と名付けられた全10点の独特なカラーが特徴的なコバーンの4連写真の開始価格は、2.7 ETH、およそ7000ドル(約76万円)。フローマン自身、この作品のひとつを額装した巨大なフィジカルバージョンを持っていて、ビデオ会話アプリで本誌のインタビューに応じる際もリビングルームの壁にかけられているのが画面越しに見える。「実は、これと同じサイズの作品をマイリー・サイラスが購入しました」とフローマンは話す。

今回のオークションでもっとも手頃なアイテムは、こちらも独特なカラーが特徴的なコバーンのポートレイトと、クリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールとのスリーショット写真を含む全20種類(1種類/5点)の「In Utero Editions」だ。「いますぐ購入」をクリックすれば、1 ETH(約2600ドル/約28万)でオークション開始と同時にすぐに落札できる。


© Jesse Frohman

オークションの収益はすべてJED Foundationに寄付される。JED Foundationとは、自殺防止とアメリカのティーンエイジャーの心のウェルビーイングを推進する非営利団体だ。コバーンのエステート(遺産管理団体)やニルヴァーナの現存メンバーにも収益が配分されるのかという質問に対し、フローマンはそのような取り決めは行っていないと答えた。だが、コバーンのエステートは今回のプロジェクトの全貌を把握しており、JED Foundationともすでに協力していると述べた。

Translated by Shoko Natori

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