カート・コバーン「生前最後の写真」がオークションへ

フローマンは、ギャラリーや第三者を介して作品を販売することには慣れている一方、コレクターに直接販売した経験はない。だからこそ、今回のNFTオークションにワクワクしていると言う。「たまにセレブリティや誰かが直接私に問い合わせてくるのですが、ほとんどは私のコネクションとは関係のないものです」と話す彼は、NFTが作品に「いままでと違う命」を吹き込んだと語る。「私は、とりわけカートを一種の偶像としてとらえています。クリプト界のヒーロー的な存在とでもいいましょうか。仮想通貨は、既存のシステムに抵抗することが大好きですから。私にとってカートは、まさにそんな存在でした。彼は、秩序といったものに対してはきわめてアンチな人物で、それを公言していました。カートなら、NFTアート空間というものにとても興味を持っていたでしょう」。フローマンがこのように言うのは、フローマンが今回のプロジェクトに取り掛かるずっと前から、コバーンのこうした精神を受けて多くの暗号資産支持者たちが彼の写真をプロフィールのアイコンとして使いはじめたことが挙げられる。

これらのNFTは、意図的にオンラインマーケットプレイスでは購入できないようになっている。代わりに、Serotoninという会社(「斬新なテクノロジー向けのマーケティング会社およびプロダクトスタジオ」を自称するこの米企業は1年近く前に立ち上げられた)がデザインしたホームページが回収を担当する(Serotoninは技術面でのハンドリングと今回のプロジェクト運営にも関わっている)。

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「人々をあっと驚かせる独創的なすべての芸術品にとっての理想的な体験は、作り手と作品の背後にあるストーリーとの絶対的な没入体験にあると考えます」とSerotoninの共同創業者兼パートナーのマシュー・アイルズ氏は話す。「私たちは『人々にカート、ニルヴァーナ、そしてその先にいるジェシー(・フローマン)とのダイレクトなつながりを感じてもらうには、どうしたらいいだろう?』と考えました。現状のNFTマーケットプレイスには候補となる良いオプションがいくつかありますが、完全に独立していて、今回のプロジェクトに特化したものはありません」


© Jesse Frohman

個人主義者としてのコバーンの本質に敬意を表するために制作されたコレクションの完成形を前に、Serotoninとフローマンはだだっ広いバーチャル倉庫的な空間でコバーンを製品のように扱わないことにこだわった。「Crypto Punk(訳注:アルゴリズムで生成された24x24ピクセルのアート画像)と関わったり、そうした世界に取り囲まれたりすることがあまりピンとこなかったんです」とフローマンは話す。「そうしたものに問題があるわけではありません。私はただ、[この連作が]失われてしまうと感じたのです。撮影から今回の発表に至るまでのすべてのストーリーを語ることができないと思いました」。フローマンは、作品のプレゼンテーションとストーリーの伝え方をもっとコントロールしたかったのだ。さらに彼は次のように言い添えた。「それに、こっちのほうがずっと面白いと思ったんです」

All Photographs © Jesse Frohman
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From Rolling  Stone US.

Translated by Shoko Natori

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