[Alexandros]が語る、狂気の渇望とドロスがバンドである理由

ベストを追い求めたい

―日本だと、やってる音楽とか作ってる楽曲のクオリティよりも、バンドの持つ物語に寄り添ってバンドを好きでいてくれる場合が多いですよね。

川上:日本って本当にそうですよ。僕は正直好きじゃない文化なんですけど、そこは個人的な話で、全く否定するつもりはないです。なぜならそういう国でそういう環境だから。例えば今回の新曲はガンダム(『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』)の主題歌ですが、それに対して批判的な意見もあるわけです。ガンダムへの思い入れが強い方もたくさんいるので。ただ、俺たちもこの曲を作るにあたって必死でぶつかって、ようやく完成させた。その経緯を知らず、曲も聴かずにただ単に批判するってどうなんだって思うけど、俺たちはロックバンドなのでそれについて多く語るつもりはない。だからリアドの加入に関しても、「リアドがバンドに入りました。最高の仲間です。いい曲作ります!」って伝えた方が一番いいと思ったわけです。

ー今ってバンド不遇の時代と言われてますよね。グラミー賞でもバンドのノミネートはぐっと減りました。バンドの価値を伝えるのも難しい。パソコン一つで曲ができるし、なんならその方がコスパもいいし。実はすごく難しいチャレンジなのかなと思うんですが……。

川上:僕としてはチャレンジしているつもりはなくて。バンド業界を盛り上げようとか、ロック業界を盛り上げようという気はさらさらないし。ただ俺はバンドというフォーマットが個人的に好きなだけで。曲を作るときにパソコン使ったりもするし。もしかしたらあんまり他の人達と変わらないのかもしれないです。あとは、実はそこまでバンドに固執してないんですよね。飽きたり、メンバーに嫌気がさしたりしたら解散するかもしれないし、俺が抜けるかもしれないし。それは普通に思います。昔から言ってますけど。

―完全な実力主義?

川上:実力主義というか、ベストを追い求めたいんですよ。「コイツもういいアレンジしねーな」ってなったら一緒にやっても意味ないし。それは俺も同じ。「いい曲作んねーな」って思われたらクビになるだろうし。こういう言い方をすると冷たいですけど、仲良しこよしとか、情とかで作るものじゃないと思うんですよ。そういうもので作る美しさもあるかもしれないけど、俺はそれは全く興味ないです。10代の時に、切磋琢磨して良いものを、本当刺激的でカッコいいものを目指して作りたいよねって思ってた人達だから。それを仕事として今やってるんだからピュアに追求しようよって話なだけです。それがもう無理だってなったら、バンドにはこだわらないし。そこでロックをなんとかしなきゃとかは全く思わないです。ただ、幸運なことにメンバーにすごく熱量と才能を感じるから俺はいいなと思ってこのバンドをやってます。

磯部:俺の場合は、もともとベースも大して弾けないまま、洋平の曲がすげーと思ってこのバンドに入って。それは今も変わらないから、やってて本当に楽しいし。他のメンバーも、まーくん(白井)も、正式加入したリアドもすごく魅力を感じるから一緒にやってるし。そうじゃなくなったら、本当にダメだなって思いますね。そんな甘い世界じゃないし。バンドがガッチリしてたって、それで売れるか、認められるか、大きくなるかはまた別の話だったりする世界だから。でもまずバンド内で魅力を感じ合ってないと無理だと思います。俺個人に関しては、やっぱステージに立って、洋平の曲を洋平の横でベースで弾いて、コーラスして。ステージ立つのが本当に気持ちいいんですよ。そこがバンドをやっている最大の部分だと思います。

で、さっきの話に戻っちゃいますけど、俺らは「バンドの持つ物語」に乗っかっていくことはないです。本当に良いものを追求して作るってことだけだから。そこについて来るか来ないかはお客さん次第なんですけど。だからどんな風に言われようが、ただやるだけ。その上でステージに立ち続けることが自分にとって気持ちいいし。洋平の曲をやってる自分がカッコよくいられるって思うし、それがバンドたる所以だと思う。それがある限り俺は死んでも自分から辞める気はないです。

白井:改めてなんでバンドやってるんですか?って聞かれても、そんなこと考えてもみなかったって感じです(笑)。さっき言ってたグラミー賞でバンドのノミネートが少ないのは、トレンドもありますから。逆にバンド業界がすごく盛り上がっている時期を他の業界の人は同じように感じていたと思うし。巡って来るものだと思いますしね。トレンドって抗えないけど、変えてはいけると思うんですよ。その雰囲気に抗うのは難しいのかもしれないけど、それを受けてどう作るかがその時々の音楽を作る人の課題というか、気持ちを動かすものだと思うので。今グラミーでバンドがいないのは、そんなに悲観することでもないのかな。そういう外的要因を全て受け入れて作るものなので音楽って。そこに対してどう思うかじゃないですか? 反骨精神を出すのか、取り入れるっていう気持ちを出すのか、だと思っています。

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