ドミコ、四方を観客で囲んだフロアライブで見せた360°のロックンロール

そして……ここからの「マカロニグラタン」、そして「My Body is Dead」の連射は壮絶だった。サイケデリックであり、またジャムセッション的でもあるサウンドの洪水は絶え間ない。それは何かの実験室のようでもあり、あるいは突然変異で生まれたひとつの宇宙のようでさえあった。音の数々は渦となり、あるいはまるで星雲のようにさえなって、フロアの中を巡っている。何しろこちらは2人と同じ高さにいて、その交信の間近で、膨張したり収縮したりする音を共有しているのだ。立ってノッている客も、座って浸りきっている客もいる。あの時オーディエンスは2人が出す轟音の中に完全に取り込まれ、まったく違う世界に連れて行かれたかのような感覚になっていたはずである。

「サンキュー、ドミコです。よろしく」

少し明るくなって拍手があり、やっと気を取り戻した。そうだ、ここは横浜のライブハウスだった……と思ったとたん、今度は「なんていうか」のフレーズが鳴らされる。話題の映画『ゾッキ』に提供された、メロディアスな楽曲だ。そしてここからは、先ほどまでの流れとまた別の世界をたどるような音が創出されていった。トロピカルな音色、ラップのような歌。ミラーボールが回った「WHAT’S UP SUMMER」はドリーム・ポップと呼んでもハマりそうな、しかしそれ以上の異様な恍惚感があった。


さかしたひかる(Gt/Vo, Photo by 西槇太一)


長谷川啓太(Dr,Photo by 西槇太一)

最後のブロックは「おばけ」に続いて「化けよ」、そして「ペーパーロールスター」だった。驀進していくラウドな音像の中で、ひかると長谷川は、向かい合っているのにアイコンタクトすら取らない。あくまで音で、呼吸で演奏している。その関係性は素晴らしいと思った。そうして出来上がるライブは、何もかもから解き放たれた場所だった。

Rolling Stone Japan 編集部

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