FAITHが語る変化の理由、バンドサウンドの「先」にあったポップスの世界

FAITH:左からヤジマレイ(Gt&Vo)、レイ キャスナー(Gt&Vo)、Akari Dritschler(Vo)、荒井藤子(Ba)

FAITHは地元・長野県の伊那市で結成された5人組バンド。いつ見ても仲がよく、彼らの周りには常にポジティブな空気が流れていて、それはいつしか自分がこのバンドのことを好きな理由のひとつになっていた。だからこそ、先日のドラムのルカ メランソンの脱退には驚いた。音楽的に大きな革新を遂げたアルバム『Sweet Error』リリース直前の出来事にAkari、ヤジマ、レイ、藤子の4人はかなり動揺したはずだ。

しかし、この日のインタビューに臨んだ4人は屈託のない笑顔で我々取材陣を迎えてくれた。本文中の発言にあるように、ここで止まっていられないという思いもあるだろうし、何よりこの作品に大きな手応えを感じているからだろう。『Sweet Error』は、これまで90’sオルタナティブロック的なアプローチで頭角を現した彼らが大きな方向転換を図った意欲作。「ポップスが一番好きな音楽になった」と語っているように、現行のワールドポップスを強く意識した内容になっている。この音楽的成長は数年前から予想されていたことであり、実際、昨日今日の思いつきではじめたことではない。細部までこだわり抜いたポップサウンドはFAITHというバンドの新たな幕開けを感じさせる。

このインタビューで4人はFAITHがどうやって新しい音と表現を獲得したのかじっくり語ってくれた。その姿はミュージシャンとしても人間としてもひと回りもふた回りも大きく見えた。

【動画を見る】FAITH「Deep in the Heart」ミュージックビデオ

―去年はなかなか身動きが取れない1年でしたけど、自分たちの音楽が広がっている実感はありますか?

ヤジマレイ(Gt&Vo):曲を出すたびにストリーミングで聴いてくれる人が増えているのを感じていて。

Akari Dritschler(Vo):数字でもわかるし、SNSでメッセージをくれる人が増えた感じがします。しかも、メッセージ全部にすごく愛がこもっててうれしいです。

レイ キャスナー(Gt&Vo):去年、横アリのイベント(“バズリズムLIVE2020”)に出たときにパッと客席を見たら、FAITHのロンTを着てる人が3人並んでて、それはすごくうれしかったですね。バッチリ見えました。これまでは普段のライブ活動でお客さんを増やしていたんですけど、それがなかなか思うようにできない中、それでもちゃんと届いてるんだって実感できました。

―2年前、ヤジマさんとAkariさんに話を伺ったとき、これからのFAITHは「シンプルで踊れるグローバルサウンドを目指す」「いろんな音楽を混ぜていく」と話していました。

ヤジマ:あ~、全然覚えてない!

―ですよね。そして今回、アルバム『Sweet Error』で大胆にサウンドを変えてきたという。

ヤジマ:ほんとッスね。有言実行(笑)。去年1年、コロナ自粛で時間がある間に自分の音楽の好みが変わって。もともとロックが大好きだったけどポップスが一番好きになって、そういうこともあってか、自分的にはポップスをつくる脳になったというのはあります。

Akari:前に話をしたときは、実際どうやってサウンドを変えていくかの具体的な方法がわからなかったんですけど、自粛期間をきっかけにレイがパソコンを使ってDTMで曲をつくるようになったり、Masさん(Mas Kimura)とチームで一緒に歌詞や曲をつくるようになってから自分の向かいたい方向がわかってきましたね。

レイ:俺はルーツとしてはインディーロックやポップパンクがすごく好きだったんですけど、上京したぐらいから世界のチャートに入るようなポップスサウンドがカッコいいということに気づいて、そこからポップスの研究をするようになりました。FAITHの曲はロックではあったんですけど、もともとポップス要素も強くて、そういう意味でもよりポップスに振り切ろうと。

ヤジマ:曲づくりも今までは毎回スタジオでセッションしながらつくってたんですけど、今回のアルバム制作に関しては多分、全部で5回ぐらいしかスタジオに入ってなくて、あとはほとんどリモートで作業しました。

―今作『Sweet Error』はすごくバランスのとれた作品に仕上がりましたね。これだけ大きな変化を迎えながら、どうやって作品としてのバランスをとったんでしょうか。

Akari:アルバムをつくるにあたって最初にテーマをたくさん出したんです。「こういう曲調ほしいね」「こういう曲をつくってみたいね」という話がいろいろ出てきた中から、「これは絶対だよね」というものを選んでアルバム制作に入ったので、曲づくりをはじめる時点ですでにアルバム全体のバランスは考えてました。そのイメージのまま作品が膨らんでいったというか、ポップなものを思い浮かべてつくりはじめた曲が超どポップになったりして、いい形に落ち着いたのかなって。

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